お金の正体
日下 公人 KKベストセラーズ 2007/3
日下先輩の最新作。銀行員がお金の話をすると、すぐに「交換価値」とかになってしまうのですが、それとはほとんど関係なく、よくここまで話を広げられますねという秀作。P.61でドラッカーのコメントを引用しています。
現場を歩けばノイズ情報がたくさん得られる。それを切り捨てて考えるようでは経済はわからない。ノイズも含めて総合的に考えられるようでなくてはいけない
これを実践した日下さんだからこそ書ける本です。ライブドアへの強制捜査から1年。お金の意味について冷静に振り返るにはよいタイミングでした。
まず、求める幸せは人それぞれだとして、良寛の句を紹介しています。
裏をみせ表をみせて散るもみじ
病気でもうそろそろ死ぬというときに、あなたのような悟りを開いた人が苦しむ姿に、まわりの人が苦言を呈したときに短冊に書いた句だそうです(P.17)。人生の最後に、ここまで達観できるか考えると味わいのある句です。
P.33では、不動産投資のイロハに触れています。
イ)土地・建物の値上がり率は経済成長率よりも低い
固定資産税をとられるから。
ロ)不動産で財をなした人はたいていユダヤ人
ハ)人口爆発の初期に購入した人は富を得られるが、衰退期が来る前に売り抜けなければならない。
土地に限らずお金をまわして儲けるのは、自分で事業をして儲けるよりも楽だとはいえない。確実だともいえない。事業そのものを見る力がない人は不動産売買に近付かない方がよいのである。(P.34)
話題は、少子化にまで及びます(P.192)。伊藤忠の採用の話なんですが、「あなたの家の宝物はなんですか」という質問に対して「子供」と書いた若い女性がいた。その人に子供がいるはずがないと思って、人事部長が尋ねると、自分のことだという返事。工場で働いていたお父さんが、毎晩わが子の頭をなでて「わが家の宝は子供だよなあ」と言っていたのだそうです。かつてのお金のありがたさは子供が育つことにあったんですね。
筆は国際金融に進みますP.198。「借りた金はなるべく返さないのが世界の常識」以下は、旧著でも触れていました。その上で、今後の予測を述べています(P.201)
・日本人は海外投資や融資を控える
・日本人は貯蓄をするのをやめる
・日本人は必要以上に働くのをやめる
・交際相手国を限定し、全方位外交はやめる
・国連強化にひと肌も二肌もぬぐ
・自ら強大な武力をもち、海外派兵をする
・国際金融に対して現実的になる
どこまで実現するかわかりませんが、その予兆があるので興味深いところです。
最後に「神代の昔から、男は稼ぎ、女は使う人」(P.206)が展開されます。思わず笑ってしまいますので、ぜひ、お楽しみください。
では(^^)/^
【参考】
・日下さんのコラム
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/p/