あぶない一神教 (小学館新書)
橋爪大三郎 佐藤優 小学館 2015/10
一神教をめぐる対談集。2015年を振り返れば、キリスト教とイスラム教に関わる事件が多く、入門書として参考になりました。
たとえば、ISISの日本人殺害事件。
一神教の教徒は神の声が聞こえたらほかの人が何を言おうが関係ありません。だから、外務省の制止を聞かずに彼はシリアに向かったのではないかと思うのです。p.22
こうした考え方を理解できないと、思考停止で終わらせることもできません。キリスト教徒は23億人。イスラム教徒は16億人に達しています。
この世には、超越的な世界がある。たとえ、あるかどうか、じぶんはわからなかったとしても、超越的な世界の潜在を信じている人びとが大勢いるから、自分もそれは認める。そういう態度をそなえているのが、一神教の文明です。p.23
参考になったのは、預言者の解説。
預言者は、神ではないということ。Godではなく、あくまでも人間です。(中略)
イスラム教の神は、言うまでもなく、アッラー。アラビア語でGod、の意味です。そして、もっとも大事な預言者は、ムハマンド。p.40
キリスト教との差は、タウヒードという考え方。
アッラーが「一つ」なら、預言者も「一」。そして、晴天、「クルアーン」も「一」。「クルアーン」にもとづくイスラムの法、シャリーアも「一」。さらに、イスラム教徒の共同体である「ウンマ」も「一」。ウンマを道ぎく、「カリフ」も「一」です。p.41
キリスト教の特徴は、原罪。原罪とは、
人間とは、しょっちゅう罪を犯すしかない存在だ。だから人間の存在そのものが間違っている、という考え方です。p.65
イスラム教と国家のそりが合わない件については、
イスラムの法学、神学の中に個別の国民国家、主演国家を築くことが正しいという論理がないのです。聖典「クルアーン」には、パウロの手紙に書かれているような、「国家に従うべき」にあたる文言が見つからない。p.84
などなど、基本的な一神教の理解が、海外情勢の理解に役立つのがわかる本でした。
では。