ロウアーミドルの衝撃
大前 研一 講談社 2006/1
自民党の総裁選挙を半年後に控え、小泉政治を振り返る上で、非常にいい本だと思います。大前さんの主張は、従来からあまり変わっていませんが、所得格差の角度からコンパクトにまとまっており、この後10年どうするのか考えさせられる内容になっています。
大前さんの主張は、以下の通りです。
日本は、1985年から始まった新しい経済の波に乗り遅れたために、90年代に長期衰退に陥った。
05年から景気が上向いてきたのは、中国関連特需による「バイアグラ景気」
日本人の所得は、90年代後半から減少に転じた。その結果、年収600万円以下のロウアーミドル以下の人たちが、8割を占めるようになった。
企業は、このロウアーミドルに対応するため、「なんちゃって自由が丘」を考える。個人は、一生年収が600万円を超えなくても豊かに暮らすためにどうしたらよいかを考えることを提言。
面白いなと思ったデータ等は、以下の通り。
・日本の中位数年齢は43歳。2025年には、50歳を超える。
・給与所得が1000万円を超える人は4.9%。300万円以下の人は37.4%。
P.65にチャートがあるんですが、日本の中位数年齢が、43歳というのは、ショックです。そもそも、1950年には、23歳ぐらいなんですよね。それが今は、ほぼ倍の43歳。アメリカが35歳ぐらいですから、考え方が保守的になっても不思議ではありません。それが、2025年には、50歳を超える。他の先進国で50歳に載る国はありません。
主要新興国のチャートがP.74にあるんですが、インドなんて、今、中位数年齢が23歳ぐらいですね。これでITで勝負しようなんて、そもそも無理かもしれません。
ロウアーミドルをターゲットにする「なんちゃって自由が丘」としては、ナチュラルキッチンや、ZARA、アイリスオーヤマ(P.88)、京王プレッソイン(P.89)、東横イン、私の部屋リビング(P.110)、関門海(P.114)が紹介されています。
一方、アッパークラスを対象にした「ニューラグジュアリー」としては、ピエトロ、健康エコナ、ハーゲンダッツ、具多が紹介されてました。
後半の政治に関する部分は、他の本でも書かれてきたことですが、あらためて、ワンセットで読むと、各政党は、こうした項目についてそれぞれどう考えているのか聞いてみたいと思いますね。
P.270にあるコメントが、印象に残ります。
いよいよ「生まれた赤ちゃんは、一生かかって稼ぐ金よりも祖先たちから遺された負担のほうが大きいぞという時代になった。
では
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