私はこうして発想する
大前 研一 文藝春秋 2005/11
大前さんの発想術の本。発想のステップは、以下の通り。
1.先入観を疑う
2.ネットワークから考える
3.他にはないものを目指す
4.歴史から教訓を引き出す
5.敵の立場で読む
6.討論する。
日本人にとって難しいのは、1かもしれません。昔から言われてきたことですが、特に年を重ねると、先入観であることすら気づかないですね。
ネットワークから考えるのは、最近重要になってきました。川上から川下まで、どのようにしてお客様に届けるのかは、ユニクロなどのビジネスを考える上でも大切だと思います。
こうした思考法が、縦糸だとすれば、この本には、横糸としての具体例がたくさん出てきます。ハっとするのが、4.歴史から教訓を引き出すで語られる例ですね。
P.106
反日教育に転換する前の中国は、もっぱら反米・反資本主義教育でした。しかし現在、国家を挙げて資本主義街道を邁進する中国のどこに、その教育の面影があるでしょうか。
たしかに、戦後の日本も、戦争中は鬼畜米英で、戦争が終わると、ギブ・ミー・チョコレート。復興が一段落すると安保反対した歴史があります。
P.114
中国では04年だけで20万件ものストライキやデモがあったと観測されています。こうした不満を逸らし、北京に国民の批判の目を向けさせないために、中国政府は、国外に敵を必要としています。
P.118
74年、当時の田中角栄首相がタイとインドネシアを訪問したときには、両国で学生デモの先例を受けました。
それなのに日本企業は、技術移転を進め、日本の印象は良くなっています。日中関係を読み解く鍵は、日本の歴史の中にあったんですね。
P.120
たとえば80年代、アメリカで繰り広げられたジャパン・バッシングは、今回の半日デモどころの騒ぎではありませんでした。しかし、いくらバッシングが激しくとも、バッシングが原因でアメリカ進出をあきらめた日本企業を私は知りません。「アメリカ市場抜きでは、日本はいきていけない」という新年(あるいは「悲壮感」を、すべての企業人が持っていたからです。
P.124
ソニーの盛田さんの話が出ています。渡米回数は400回におよび、日米交渉が荒れたときは、政治家が頼りないからと盛田さん一人でアメリカ政府の要人と面会し、ことにあたった。
中国に進出している企業の経営者の多くは単身赴任で、週末には日本に帰る人も少なくない。日本の経済人で、中国の要人と北京語で話そうとする人は皆無。
今の日中関係を盛田さんに聞いてみたくもあります。
では。