スウェーデンのベテランのジャーナリストが、家具王カンプラード氏を徹底取材。寒村の少年が、フォーブズ#4になる軌跡は、松下幸之助を思い出させます。日本企業が、ポスト・サブプライムの企業の理想像を模索する中、よいヒントになるのではないでしょうか。
イケアは、スウェーデンで創業しましたが、本社はオランダにあります。
私たちの頭はレイデンにありますが、心はエルムフルトにあります。中略(他社は)私たちのスモーランドというルーツを盗むことはできないのです。p.17
と、創業者に言わしめるほど、企業に影響を与えたスモーランド。スウェーデンの南部といえど、北緯57度。宗谷岬が北緯45度なので、それなりに寒く、かつ冬は長い夜が続く。土地はやせており、20世紀初頭には、人口の1割が移民となって国を出たほど厳しい土地だった。
おのずと住民は、勤勉、謙虚、倹約家となり、家族が助け合って生きるより他無かった。一方、資源にも恵まれなかったゆえに、一部の人はバイキングとなり、世界の海に出ていた。これが、起業家精神につながり、透明でフラットな組織を実現した。
北欧には、”The north wind made the vikings” ということわざがありますが、そういうことなんですね。
H&M創業者 Erling Persson氏は、カンプラード氏が商売を始めた時の顧客として紹介されています。p.55 そういえば、両者は、シンプル&モダンで、安いという共通点がありますね。
それほど故郷を愛する創業者も、相続に関する法律があるために、国を出ます。当時の経営者は、イギリスに出国していたのに、還付ラード氏は、そうしません。
私は、ある国に対してノーと答えました。その国では、こうした問題に関する法律が騙し合いとペテンの上に成り立っていることが判明したからです。p.180
これは、common law vs. civil law の国を考える上で、貴重なコメントです。イケアは、長期的な雇用と革新的な企業活動を両立させようとして、非上場、自己資金での成長を選びました。こうした性善説にたつ経営をするために、common lawの国に本社を置くことを拒んだわけです。
同氏は、スウェーデン社会民主党の初代首相P.A.ハンソン氏の「国民の家」に共鳴し、連帯と平等を重視する北欧型福祉社会の理念を支持。アメリカ型の競争原理に最後までなびきませんでした。
一方、過去10年の日本は、大陸法というインフラはそのままに、雇用を流動化し、金融を自由化することで、革新的な企業活動/構造改革を実現しようとしました。しかし、結果としては泣き別れになってしまいました。
どうも、最近の日本は、元の鞘に戻ろうという動きがみられますが、新しい企業を生み出さなければならない、古い企業の構造を変えなければならないという問題は、消えたわけではありません。
自由化・規制緩和がダメなら、どうやって、もう一度問題に取り組むのか。考える上でも、北欧の企業は、とても参考になりますね。
では。