【本】最底辺の10億人

最底辺の10億人
The Bottom Billion
Why the Poorest Countries are Failing and What Can Be Done About it

by Paul Collier 日経BP 2008/6

オックスフォード大学教授による経済発展論。最底辺の10億人は、、一人あたり所得が減少しており、”Developing” countriesでさえないことから、ほかの途上国から区別し、別の対策をすべきと主張しています。これらの国々が陥る4つの罠は以下のとおり。

  1. 紛争の罠
  2. 天然資源の罠
    天然資源を輸出すると為替レートが上がって製品輸出ができなくなる現象。資源国では民主主義よりも独裁制のほうが発展は早い。
  3. 内陸国の罠
  4. 悪い統治の罠

“Cool it!” 同様、深い洞察と豊富なデータで、開発援助の常識を次々に斬って生きます。

天然資源の罠は、資源のない日本からは理解しづらいのですが、Jeffrey Sachsの天然資源のレントを引用して、問題提起しています。

資源のレントは民主主義を機能不全にする。これが資源の呪いの核心である。p.72

柔軟性を欠く先進国、縦割りの国際機関、貪欲な石油・建設企業、知性を欠いた善意のみに終始するNGOなどに触れていきます。

第6章では、グローバル経済の中の最貧国を考察しています。アフリカも、世界金融市場に組み込まれているわけですが、驚くデータのひとつが、私有財産が国外に保有されている割合です。90年には、私有財産の38%が海外に保有されていたそうです。

アフリカはグローバルな金融経済に統合されているが、その流れは誤っており、世界でもっとも資本の乏しい地域が資本を輸出しているのである。p.148

対策は、次の4つ。

  1. 資金・技術援助
  2. 軍事介入
  3. 法と憲章
  4. 貿易政策

援助で印象に残るのは、p.179の話。クラスで頭のいい子供は、国家建設のために、行政機関に入りたいと希望した。頭の悪いいじめっ子は、軍を希望する。20年が過ぎてクーデターが起こる。ガキ大将は、将軍なると、かつての優等生を自分たちのような落ちこぼれの人物に変える。軍政が民政移行するころには、行政は崩壊。国を発展させる手段ではなく、国を強奪する手段になっていると。一瞬、どこかの国のことを思い出してしまいました。

日本人からみると、2の軍事介入は、「すべきでない」と思うでしょうが、著者は成功例を挙げて、選択肢から排除すべきでないと説きます。

内戦が終結した国のわずか半数だけが、10年間再燃することなく、なんとか切り抜けることができるのである。p.48

内戦に陥った国への援助は、政治家にスポットライトがあたる1~2年ではなく、10年間は必要なんですね。うした内戦に関するデータを読むと、イラクも違ってみえてきます。また、ソマリアの状況をみれば、軍事介入の失敗が、先進国に直接影響があるのもわかりますね。

やはり、最大の障害は先進国の無関心なんですね。

では。

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