なぜ世界は不況に陥ったのか
池田信夫 池尾和人 日経BP 2009/3
サブプライム危機以降の世界経済についての集中講義。池田先生のブログを読んでいる人には、新しいことはないと思いますが、池尾先生との対話になることで、よりわかりやすくなっています。
世の中の政治家や実業家は、何十年か前の古い経済思想の奴隷である。p.139
ケインズの言葉を紹介して、最新の経済学の研究成果と実際の政策策定現場のギャップを埋めることを目的のひとつとしています。
印象深いのがこちらの警句。
地獄への道は善意で敷き詰められている p.119
今回の危機についても、良かれと思ってやったことが裏目に出た。その一つの背景に”Great Moderation”(P.61)を上げています。平時であれば、リスクとリターンをにらんで投資をするはずが、皮肉なことに、大平穏の時代があったために、リスクを過小評価するようになった。
任期中にたった二回、しかも軽度のリセッションしか引き起こさなかったことで、ひょっとするとグリーンスパンは非難されることになるかもしれない p.175 ラジャンの言葉
もちろん、データをあげて、世の中の誤解を解くことも、本書の特徴になっています。たとえば、アメリカ人が浪費好きだという件について。
医療費が家計支出の20%以上を占めている。(中略)都市部では家賃が非常に高く、家計支出の25%を占めている。またアメリカは自動車がないと生活できないような町の構造になっているので、運輸・交通費が12%。
つまり医療、住宅、自動車という固定費だけで、家計支出の60%近くになってしまう。p.83
20年以上前に経済学を学んだ私は、累計40年ほど前の経済学で世の中を見ているのがよくわかりました。
では。
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