第二次世界大戦 ウィンストン・チャーチル 河出文庫
The Second World War by Winston S. Churchill
イギリス首相による第二次大戦回顧録。ノーベル文学賞受賞作品。80年前の戦争だが、学ぶことは今なお多い。そもそも、第一次世界大戦で敗れたドイツが、どうやって国力を持ち直したのか。
ドイツ参謀本部は、ドイツ陸軍が1943年までに、フランス軍以上の大きな規模で編成され、立派に仕上げられ、そしてそれに相応する兵器工場や装備を持てるなどとは、とても考えていなかった。
p.99
内燃機関と飛行技術が発見されたために、国家間の相対的な戦力を急激に変更させることのできる、国を挙げての対抗手段としての新兵器が、突如として出現した。
p.99
力をつけたドイツの主張は、駐英ドイツ大使リッベントローブとの対話。
イギリスが東ヨーロッパにおける自由行動を認めてもらいたいのである。ドイツとしては、増大するその人口のためにもレーベンスラウム、すなわち生活圏を持たなければならない。
p.179
チャーチルの答えは明快。
イギリス政府としては、東ヨーロッパにおけるドイツの自由行動には同意できないことは確かだと。
p.179
習近平主席が、オバマ大統領に対し、太平洋を2分しようと提案したのを思い出します。
ドイツの領土拡張は止まらず、1938年オーストリアを併合。ムッソリーニを述懐するチャーチルの言葉。
彼はマキャベリの有名な文句「人間は小さな悪に対しては復讐するが、大きな悪に対しては復讐しない」というのを、つくづく思い浮かべたであろう。特に西欧民主主義諸国は、彼ら自身が直接攻撃を受けない限り、暴力の前には頭を下げるという証拠を繰り返し示しているように思われた。
p.197
欧州各国が、ロシアのクリミア半島侵攻を許さない背景には、第二次世界大戦の反省もあるのではないか。 そして、1939年9月1日、ドイツはポーランド侵攻。イギリスも宣戦布告。
私は政府が戦争の最初の数日間に、空襲の犠牲者のために25万以上のベッドを用意したのを知った。
p.275
英国が有事にどれほどの団結力を見せるかという例。その伝統は、80年後のコロナ対応にも受け継がれている。
軍人としての知識も群を抜いている。ドイツ軍の攻撃の模様をあたかも自分が前線にいたかのように詳細に記述している。地理、兵器の知識、戦略、軍人のプロファイリング、あらゆるものが頭に入っていなければ、戦時の首相は務まらないのがわかった。
ドイツ周辺国があっという間に侵攻されたのも印象的。攻撃されてから体制を立て直そうとしても遅い。日本にその日が来たとして、反撃する時の首相に軍事知識はあるだろうか。