Leading Matters Lessons from My Journey John L. Hennessy Stanford University Press 2018
邦題『スタンフォード大学名誉学長が教える 本物のリーダーが大切にすること』元学長、現在、グーグルの親会社であるアルファベット会長のリーダーシップ論。
第1章は、Humility(謙虚さ)。アメリカのリーダーシップ論といえば、CourageやVisionaryであることが先に来そうですが、勇気は第5章。
作家のウォルター・アイザックソンが、序文で、スティーブ・ジョブズとアインシュタインが、謙虚(humble) だったことを紹介しています。科学を極めたアインシュタインが、小学生の女の子から宗教について聞いた時に回答はこちら。
There is a spirit manifest in the laws of the universe — a spirit vastly superior to that of humankind — in the face of which we must feel very humble
p.x
科学を極めてなお、宇宙を支配する法則の前では謙虚でなければならないのですね。ただ、自信のない指導者になれというわけではありません。常に指導者として進化していくためには、学び続ける姿勢が必要なのですね。
自分の弱点を直視し、他の人の長所を見つける。謙虚さをもって組織を導くということは、自分の成果を他人に発表させること。自分が正しいとは限らないことに気づき、率直に認めること。失敗から学ぶ機会を得ること。
Mistakes happen to every leader, and it’s better to accept them, to have the courage to admit the mistakes, and to decide how to move on.[…] The process is not neccessarily pleasant, but it is a lot easier if you are humble
p.20
第2章は、Authenticity and Trust (真正であることと信頼) 冒頭のリンカーンの言葉に尽きるかと。
Be sure you put your feet in the right place. Then stand firm.
Abraham Lincoln
何かしようと思っても、信頼してもらわなくては始まらないのは、どこの国でも同じです。ソクラテスの言葉
The way to a good reputation is to endeavor to be what you desire to appear.
p.23
なりたい自分と、それらを体現する努力でしょうか。p.23にジョージ・ワシントンが、そのように成長した例が記されています。
第3章は、Leadership as service (奉仕としてのリーダーシップ)。なんだか、シリコンバレーっぽいい言い方ですが、メンバーに力を発揮してもらうのが、リーダーの仕事。
自分の権限や報酬のためのものではありません。自分の周りの小さな行いに気づく。他人の成功を祝う。
第4章は、Empaty (共感)。人の痛みがわかる力ですね。決断を下す、目標を定める時、共感を考えていたかと言われれば心もとないです。自らの行動を振り返るものさしなのですね。
第5章は、Courage (勇気)。これも、リンカーンの言葉に尽きます。
It often requires more courage to dare to do right than to fear to do wrong.
p.65
勇気は、リーダーが正しい行動をとることを強制すること。多くの人は、何が正しいかはわかるのですが、そのように行動できないのですね。
第6章 Collaboration and Teamwork (コラボレーションとチームワーク)。2つとも、うまく日本語に訳せません。大きな仕事ほど、多くの人の協力が必要になります。自分と考えの異なるメンバーをいかにまとめるかは、リーダーの重要な能力です。専門家に的確な質問ができる。その知見が、組織に与える影響を把握する。メンバーを正しく選び、チームの運営の基本ルールを定める。
第7章は、Innovation (イノベーション) 。これも、シリコンバレーっぽいですね。技術がメンバーに刺激を与えるのを何度もみてきましたが、積極的に捉えています。
第8章は、Intellectual curiocity (知的好奇心)
The important thing is not to stop questioning; never lose a holy curiosity.
Albert Einstein
文学、伝記、歴史から、学べということでした。歴史に残るのは、困難を乗り越えたリーダーが多いですね。たとえば、また、ワシントン。
In the British system, the officers were gentlemen and the enlisted men were not — a class system that reflected British life. As a wealthy landowner himself, Washington could havve structured his army similarly. Instead, he chose to treat the enlisted men in the Continental Army as his colleagues, not as subservient individuals.
p.122
第9章は、ストーリーテリングですね。日本の首相を見ていると、これが必要なのがわかるのですが。メンバーを動かしたいのなら、魅力的な物語を伝えなければなりません。出世するほど、事実とデータの役割は減るのだそうです。
第10章 Legacy (後世に残せるもの)。それは、自分が来たときよりも椅子を磨いて、次の人に渡すこと。
【参考】