高齢化速度とPBR

それでは、高齢化速度(Aging speed) と株価純資産倍率(Prive Book value Ratio, PBR)の関係をみていきましょう。

横軸に、今後10年の高齢化速度(2022 vs 2032)をプロットしました 。最も速いのは香港ですね。2022年の高齢者比率(65歳以上÷15~64歳)は30.3%なのですが、2032年には48.2%へと17.9%ポイントも上がります。日本の最高速度が2016年の14.4%ポイントでしたので、それを上回るスピードです。先日の比喩でいえば、日本の高齢化の最高速度が時速144キロだったのに、香港は時速179キロにもなるということですね。PBRが1を割ってしまうのも納得です。

Source: https://www.stern.nyu.edu/~adamodar/New_Home_Page/data.html & World Population Prospects 2022.

 実は、これから高齢化地獄を見るのは、香港、シンガポール、韓国、台湾、タイだということです。これらの地域に現地法人を持つ企業は、高齢化のコストを中期計画に入れるべきでしょう。
 興味深いのは、日本の高齢化速度が3.8に落ちることです。中国やアメリカの高齢化速度の方が、むしろ速いですね。高齢化の社会的コストは、高齢者比率の絶対値よりも、その変化率(速度)に比例するのであれば、アメリカや中国の方が社会問題がヒドくなるのではないでしょうか。

 一方、高いPBR国を見ると、インフレ国が並んでいますね。昨日は100円ショップだったのに、今日は200円ショップになるような国では、簿価自体が信頼されないでしょう。株価は高くしておかないと、インフレで価値が目減りしてしまいます。

 決定係数(R2)は0.0119なのでをみると、ほぼ無相関ですね。

 そこで、時価総額上位20カ国に絞ってみました。

 決定係数は、0.3172に上がりましたが、イマイチですね。むしろ、高齢化速度に気づいていない投資家は、日本株を低PBRに放置しているのかもしれません。

 米株も、実は時価総額を持ち上げているのは、ビックテックで、世界市場を常に相手にしているので、自国の高齢化速度など無関係なのかもしれません。そこで日米を除くと。

 決定係数は0.5225にまで上がりますね。これはひょっとして、仮説として取り上げてもよいのかもしれません。高齢化速度が高まると、株価純資産倍率が下がると。

では。