映画 わが母の記

横綱相撲の巻。

主演の役所広司、樹木希林に加え、宮崎あおいまで演技が素晴らしい。キャスティングも秀逸。普通、役所広司があれだけの演技をすれば、それを語っておしまいのはずが、樹木希林のすごい演技でコメントが止まらなくなります。

確か、私が学生の頃に、「早く年とりたい」とおっしゃっていたように記憶していますが、有言実行で、すごい年の重ね方をされております。驚くのは、最初からおばあちゃんででてきて、そのおばあちゃんが「年をとる」のを演技切っている。撮影は、それぞれのシーンが前後して撮影されていると思いますが、彼女は、フィルムの最終型を頭に描き、その時々の八重をフィルムに焼き付けています。宮崎あおいがセーラー服着ているのとは、わけが違います。
この大ベテラン女優が、ここまでの演技をすると、若手は薄っぺらく見えるのですが、宮崎あおいも一歩も引いていない。なんなんでしょう、この安定感。横綱相撲。
父が三國連太郎と今頃気づきました。名演ですし、同氏の人生と重なるとまた、趣き深いです。

シンガポールで観ると、日本映画の伝統を感じます。今年公開の映画なのですが、どこか小津映画のような印象を受けました。
絵的には、ライティングと、雨が印象に残りました。うまく説明できないのですが、日本映画の光は、独特ですね。夜の室内のシーンは、どれも薄暗いのですが、しっかりと役者の表情が浮き上がっている。光の加減で伊豆、東京、軽井沢が伝わってきます。
 雨も、液体は透明で映画には向かないはずなんですが、きっちり伝わって来ました。葉っぱに落とすなどのテクニックに日本を感じました。