仕事の流儀を観ました。
スペシャル 2010年10月16日放送
松本人志スペシャル 笑いに魂を売った男
アーティストは、次の時代を先取りするような発想や行動をとるので、経営にも非常に役立つと考えています。そういう目で見ても、面白い番組でした。
番組では、ごっつを取り上げていましたが、私は、夢で逢えたらの衝撃の方が大きかったです。ドリフが良くも悪くも昭和的だったのに対し、コントで出演者の世界観をだしていたのが夢で逢えたらでした。
深夜だったからできた試みも多かったですけども、最終的には20%取ったんですから、山が動いた番組でありました。
それから20年。
2つの点が印象に残りました。
ひとつが、才能主義。プロジェクトXであれば、普段光が当たらない地上の星を紹介しながら、実は松本ワールドはこんなに多くの人に支えられているという絵を撮ったはず。今回は、見事なまでに彼中心に笑いが作られえいる。
これが現代の企業経営に通じているようで興味深い。コンサルタントは、会社に新制度を入れることで売上が立つ。「社長次第ですよ」なんて言ったら、ヘッドハンターに仕事を奪われてしまう。
しかし、現実の市場では、「社長次第」が横行している。スティーブ・ジョブズや、ジェームズ・キャメロンを見ていると、1人のスーパー経営者を生むために、(そこまで優秀でない経営社のいる)100社に潰れてもらう世の中になったのではと思ってしまう。
今回のコントづくりも、基本的に松本さんが一方的にしゃべって本人が納得するまで周りが話を聞く。スタッフは、台本にはオチを2つ用意してあるのだが、本人が選んだのはアドリブ。それで良いし、これがクリエイティブなのだ。
もうひとつが、直系家族の呪縛。スタジオに入るのも一番最後ですし、企画会議でも、本人以上に才能がある人はいない。名実ともに「お父さん」になってしまうと、直系家族の社会ではもう、一人でもがくしかない。
夢で逢えたらのころは、実は本人の才能が一番であっても、名目上の「お父さん」は他にいた。吉本の社長、フジテレビの社長、番組プロデューサー。名が強すぎると面白いことが実現できない。そのバランスがおいしい時期に入ってきたのが、夢で逢えたらであり、バランスしたのがごっつ。そして、ごっつの中で本人が名目上も家長になってゆき、キャシーをコントロールできないところまで暴走できるようになってしまう。
こうなってくると、アートとしては研ぎ澄まされてくるが、その他の部分(数字、収支)などが後回しになっていく。それが、97年だったのかと思う。
核家族社会であれば、ボスの威厳は同じでも、まだ、ロゴスが生きている。若手から率直な質問もくるし、オーナーから契約書を突きつけられる局面も出てくる。しかし、直系家族では、「どちらが上か」が重要で、芸人でも上に立つと、そのバランスを調整するのが難しくなる。
直系家族社会で、才能のある人に長期間活躍してもらうには、どうしたらいいんでしょうかね。20世紀は愚直にネジを閉めていれば豊かになれましたが、今世紀はそうもいきません。
では。