第一宇宙速度とは、衛星軌道に乗せるために必要な速度だ。8km/s(2万8800km/h)で打ち上げると、地球に落ちることなく世界をグルグル回り続ける。
これをビジネスに例えると、オランダ人はすぐに第一宇宙速度に達する。ひとりで事業を始めても、他の国にナンナク販売するし、アウトソースもしてしまう。
たとえば、ドイツ国境に近い畑でチューリップを作る農家は、この色はドイツの方が高く売れそうだと思ったら、トラックでドイツに行って売れてしまう。
私がXeroを使っている。ニュージーランドの会計ソフトだ。会計士もニュージーランド人だ。クラウド上で私の簿記を確認して、税務処理をしてくれる。Xeroはオランダ語をサポートしていないが何の問題もない。
一方、日本の会社は、上場企業であっても、第一宇宙速度に達しないことがある。世界展開するなら、システムを統一し、事務は最安の国にアウトソースするのは基本動作だ。英語圏でコールセンターに電話すると、マニラに転送されているというのはよくある話だ。
しかし、日本企業の場合、会計ソフトは各国バラバラ。事務も現地の日本人を雇ってやってもらうというのがいまだに続いている。本社は高いお金を払ってSAPを入れたのに、欧州現法はSAPでないということすらある。
アウトソースも、英語で事務が完結しないという理由がこれまではあった。しかし、ChatGPTが無料で完璧に翻訳してくれたおかげで、それが理由でないことがハッキリした。
やはり、世界で最もハイコンテキストな文化が、先輩後輩の関係を生み出し、そこから抜け出せないのではないだろうか。
日本人は、shakaijin になった後、空気を読む訓練をする。上司が何を求めているのかをひたすら察知する。20年ほどのAir reading competition の勝者が、現法の社長になる。チャンピオンが部下に求める空気察知能力は、とてもローカル社員が取得できるものではない。
もちろん、現法にも利益目標がある。費用削減で、アウトソースも利用する。しかし、自分の直属の部下は(空気を読むことができる)日本人にしたくなる。出世するほど自分は何もせず、部下がお膳立てする上司を見てきた大企業の人ほど、そうなってしまう。
現法トップとその部下が日本式で仕事をする影響は決定的だ。海外現法のメリットの一つは、会社のOSが英語で書かれていることだ。しかし、日本人トップがそのことに気づかないと、知らない間に会社がPC-9800になってしまう。
日本の若者には、Shakaijinになる前に、OSが英語の会社を体験してもらい、海外展開する方法を見ておいてもらう必要が重要だと思っている。