【浦潮】ウラジオストック旅行記

プロローグ

ロシアを理解したかったら、陸路でモスクワへ入れ。

10年前のユーラシア大陸での教訓はそういうことだった(『揺れてユーラシア』参照)。これまで旅行した国50カ国。モスクワ/サンクトペテルブルグは、最も美しい都市だった。飛行機でモスクワに入れば、ロシアをヨーロッパの先進国と思うだろう。

しかし、4泊5日のシベリア鉄道に乗ると、違う景色が見えてくる。当時の列車は、中国から乗ってきた列車よりもグレードが低かった。中国系のおばちゃんが、衣類をパンパンに詰めたバッグを車内に持ち込んでいた。途中の駅では数百人のロシア人が待ち構えており、おばちゃんは窓から衣服を即売するのだった。ホームに売り子はいない。食べ物を買うのに駅を降りて外にでなければならない。そう。ロシアはアジアの発展途上国だった。

ところが、モスクワに到着すると、景色は一変する。美しい建物に整然とした街並み。98時間列車に揺られると、実感する。ここは、この広大な領土からお金を集めて作った街なのだと。

それから10年。そんな首都から北方領土に大統領がやってきた。国土の広さを実感している私としては、こんな地の果てにわざわざ元首が来ることに驚いている。資本主義化の苦しみを経て、ロシアは新たなステージに差し掛かっている。もう一度、ロシアに行ってみたいと思う。