エコノミストにガレオッティ氏のロシア分析が掲載されてました。
Mark Galeotti on Vladimir Putin’s self-inflicted wounds
プーチンの治政を、adhocracy(官僚的な方針や手順を持たない、柔軟で順応性のある非公式な組織構造)としています。
彼の治世は中世の宮廷と近代的な官僚主義のハイブリッドであり、権力は君主に近い人物によって支配される。
そして、
権力は形式的な役割よりも君主に近いかどうかで決まる。(中略)この宮廷は、分割統治という古くからの戦術によって管理されている。意図的に責任が重なり、利害が拮抗する対立する個人や組織が互いに対立している。剣闘士の試合を監督する皇帝のように、プーチン氏はすべての人の運命を決定する裁定者である。
ここに共同体家族の特徴が出ています。日本のような直系家族的な国から見ていると、プーチンが絶対的な権力を持っているのはわかります。戦前の天皇と同じですね。しかし、民間の軍事会社の社長が、国防長官の罷免を求めて、プーチンに直談判するのに違和感を持つのではないでしょうか。私はここに、子供を平等に扱う共同体家族の文化を感じます。
たとえば、日本の二・二六事件を実行したのは、正規の陸軍でした。首謀者は大将でも、大佐でもなくその下の大尉。大尉は、永田町・霞が関を制圧したにもかかわらず、天皇に直談判はしません。陸軍の命令系統をたどって、陸相に蹶起趣意書を手渡します。天皇陛下に説明をしたのは陸相でした。
見事なピラミッドであり、日本の場合には階級による上下関係に加え、同じ階級でも先輩後輩の上下があり、この(究極の)非常時でも、それは守るのです。(暗殺したことは、ちょっと脇に置きます)。
一方、共同体家族のロシアは、民間軍事会社の社長も、参謀総長も同じように扱っているように見えます。しかも、意図的に業務を重複させ(軍事)競わせる。これが、陸地の9分の1を占める世界最大の国家を統治する知恵なのでしょう。部下を平等に扱わないとあの広大な国土は支配できないのです。
ガレオッティ氏が指摘しているように、平時にはこれは有効でした。しかし、有事の国防大臣にしてみれば、自分の命令を聞かない民間軍事会社が、勝手に展開していては、有効な手が打てません。自分の支配下に置こうとするのは道理です。今回は、それが起こり、事前に察知したワグネル側が、反発したのが基本的な流れなのでしょう。
日本のような直系家族的な社会を客体化できないと、ロシアが崩壊するように見えると思います。ただ、家族類型を学ぶと、共同体家族が平時から有事に切り替える時に起こる摩擦の一つと見えてくると思います。