東京五輪が延期になったかと思ったら、もう一つのオリンピックが始まっていました。コロナウイルスに対する政府の対応を競う「コリンピック」とでも言える競技です。シンガポールからオランダに移住して、政府の違いを実感する日々です。
様々な力が試されますが、最初の競技は、新たな脅威に対する即応力です。シンガポールは、SARSの経験を生かして、さすがの瞬発力でした。日本の隣国は、まだ感染者がゼロと認識しているようですが、ここは「明るい北朝鮮」の圧倒的勝利でした。
2つ目の競技は、専門家の分析を理解する力。感染症疫学の専門家がほとんどいない国も問題ですが、CDCのような専門機関を持っていても、世界で最も死者が出てしまうこともあります。
3つ目は、国民救済競争。感染防止で、家にいろと命じるなら、生活費の補償が必須です。資金力が試される競技です。オリンピック選手は、本番当日頑張れば良いわけではありません。その前の4年間にどれだけのトレーニングをしたかが、当日の結果に反映されます。
下図は、財政収支のGDP比率です。シンガポールはずっと黒字なんですね。都市国家なので、国土インフラへの投資が不要なのでしょうが、健全です。
オランダも、2016年以降は黒字にしてました。これだけ社会インフラに投資をしながら、リーマンショックを乗り越えて黒字に戻していたのは、立派だと思います。
ドイツが90年代赤字が続いていたのは、東ドイツの統合を抱えていたからですね。2007年でそれを終え、リーマンショックを乗り越えて、2012年以降は黒字を維持していました。
以上の国が、矢継ぎ早に国民支援策を打ち出すことができたのは、この積み重ねがあったからですね。
日本は、1993年以降、一度も黒字になっていません。何度も「ダイエットする」と言ってきたと思いますが、「明日から」という理由がでてきて27年が経過というところでしょうか。財政的に「基礎疾患がある」のではないでしょうか。マスク2枚しか配れなくても、驚きはないですね。「思い切った財政出動を」という勇ましい政治家は何人も見ましたが、知らないうちに黒字に戻しておく政治家を得ることはありませんでした。オランダに住んでいると、財務省を批判するのは(実際の政治力学は脇において)筋が違うと思います。
4つ目は、国民に語りかける力。メルケル首相、エリザベス女王のスピーチは、素晴らしかったですが、オランダの首相、国王も、国民の支持をえています(オランダ語わからないので伝聞になりますが)。奥さんが桜見に行ったり、おうちの動画を投稿して炎上してしまう国とは、ちょっと違います。
5つ目は、メディア統制。これも、オランダ語わからないので、感触でしかないですが、オランダは抑制的だと感じます。日本とアメリカはテレビはハシャギ過ぎな印象。放射能の時と同じで、煽った方が、視聴率が稼げるのでしょうね。中国のことを「消防士のふりをした放火魔」とする批判もありますが、日本のテレビ局も同じ立場のように見えます。
10年後ぐらいに、コロナによる被害(直接、間接)を分析できた時、メディアを統制度度と相関関係があるのか興味深いところです。
オリンピックは2週間ですが、コリンピックは長引きそうですね。しかし、これほど、それぞれの国の形を見せてくれる材料もないと思います。
では。