ヴィクトール・E・フランクル 2002/11
Ein Psychologe Erlebt Das Konzentrationslager
in… trotzdem Ja zum Leben sagen: by Viktor Emil Frankl (1977)
ユダヤ人精神分析学者が、ナチス強制収容所体験をつづった本。家族を失いながら、一人解放されるのは、読むのも辛いですが、著者が自らを客体化する訓練を受けているので、教訓を汲み取ることができます。アウシュビッツの極限状態を示すひとつの例。
収容ショック状態にとどまっている被収容者は、死をまったく恐れなかった。収容されて数日で、ガス室はおぞましいものでもなんでもなくなった。彼の目に、それはただ自殺する手間を省いてくれるものとしか映らなくなるのだ。
p.29
収容時のショックも、収容所の生活が始まると徐々に心理も変化していきます。
殴られる肉体的苦痛は、わたしたちおとなの囚人だけでなく、懲罰をうけた子供にとってすら深刻ではない。心の痛み、つまり不正や不条理への憤怒に、殴られた瞬間、人はとことん苦しむのだ。
p.38
極限の生活の中で著者がたどり着いたひとつの思いがこちら。
何人もの思想家がその生涯の果てにたどり着いた真実、何人もの詩人がうたいあげた真実、生まれてはじめて骨身にしみたのだ。愛は人が人として到達できる最高のものだ、という真実。
p.61
独身の若者が特攻に出撃するときに、母親に思いを馳せるようなものでしょうか。こうした狂気が、完全な過去のものとは思えない自分が居ます。ふとしたボタンの掛け違いで、いつどこにこうした社会が再び現れるかわからないですね。
では。