【本】地政学の逆襲

地政学の逆襲

ロバート・D・カプラン 櫻井祐子(訳) 朝日新聞社 2014/12

The Revenge of Geography by Robert D. Kaplan

地政学の基礎と、現代国際政治への応用をまとめた本。毎日、北朝鮮、イラン、シリアと目まぐるしく国際ニュースが飛び交いますが、地政学を学べば、その背景がわかることでしょう。良書でした。

第1部は、地政学の理論。第2部以降は、現状分析です。
冒頭に朝鮮半島について語ってました。p.19

ドイツ再統一が実現したことを考えれば、統一挑戦の誕生に備えるか、少なくとも想定しておいた方がいいだろう。文化と地理の力がすべてを圧倒する日が必ずやってくる。自然な境界地帯と一致しない人為的な国境は、とくに脆弱なのだ。

理論は、 Mackinderの「世界島」(ユーラシア+アフリカ) p.98。

一つの海が地表面積の12分の9を占め、一つの大陸、つまり世界島が地表の12分の2を占めている。それに南北アメリカを便宜上2つの島として、それらと多くの地位様島々を合わせれば、残りの12分の1になる。

さらにいえば、ユーラシア(アフリカを除く)は世界の人口の75%を占め、世界の富の大半、つまりGDPの60%とエネルギー資源の4分の3を占めている。

Who rules East Europe commands the Heartland; who rules the Heartland commands the World-Island: who rules the World-Island controls the world. p.100

第6章は、Nicholas J. Spykmanのリムランド理論。。第8章は、ポール・ブラッケンの空間の危機。

アメリカ人やヨーロッパ人は、グローバリゼーションに目を奪われがちだが、ユーラシアではナショナリズムと軍事力に関心が向いている。p.142

ユーラシア諸国では、それとともに官僚機構の求心力が高まったため、軍は国内政治から国外に目を向ける余裕ができ、殺傷力と専門性を高めていった。p.143

イスラエルから始まり北朝鮮まで途切れなく続くベルト地帯の諸国が、核兵器や化学兵器を組み立て、弾道ミサイルを開発している。他極的な恐怖の均衡が、従来の戦域や政治の舞台、西洋による地域の分類を超えて、一万キロ弱にわたって弧状に広がっている。p.143

「距離の終焉」の後は、過密都市で民族主義が高まると予測。p.148

 メガシティが、21世紀の地理の中心になる。世界には人口が1000万人以上の都市はすでに25あり、2015年までに40都市に増えると予想されているが、そのうち2都市を除けば、すべて旧第三世界に属する。(中略)
重要なのは、旧第三世界にはリストにもうすぐ載りそうな都市がたくさんあり、人口の半数以上が都市環境に暮らし、この割合は2025年に3分の2に高まるということだ。

現代は、世界人口の多くの割合がスラム環境で暮らす時代なのですね。

第2部は、個別の地域分析。朝鮮半島は、p.241。朝鮮は統一され、中国の有利になると予測。米軍撤退で、日本再軍備とのことですがどうなるでしょうか。