【本】未来を読む

未来を読む 

PHP新書 2018/6

Voiceなどに掲載されたインタビュー。非常に示唆に富むものでした。

第2章は、ユヴァル・ノア・ハラリ教授。「役立たず階級」の議論は、インパクトがあります。まずは、平和な話から。

われわれはいかなる時代と比べても、平和な時代に生きています。たとえば全世界で、戦争と犯罪による1年間の死者数は60~70万人です。ところが、交通事故の支社数は130万人。肥満とそれに関連する疾患による死者数は300万人です。

p.78

今日、戦争が広がっている地域は、まだ旧式のモノベースの経済が強いところだけです。中東では、富の源泉は石油という「モノ」です。だから戦争を起こして石油を獲得することが理にかなっています。

 一方、中国、韓国、日本など世界のほとんどの国は、鉱物資源ではなく知識経済です。ですから、戦争をしても得るものが小さく、失うものが大きい。これこそ、米中の緊張が全面戦争まで発展しない正当な理由です。

p.80

19世紀には産業革命が都市の労働者階級という新しい階級を創り出しました。20世紀は、この新しい労働者階級を中心に、政治や社会が動いていきました。そして21世紀、AIとバイオテクノロジーの出現により、「役立たず階級」というまったく新しい階級が出現すると考えています。

p.86

失業している状態というだけでなく、彼らを雇用できないからです。AIやロボットより優れた成果を出す知識や能力が彼らにはありません。だから経済的価値がない状態になっているのです。政治的価値もなくなってしまうかもしれません。

 軍事分野では、すでにほとんどの人が役立たずになっています。20世紀の軍隊は、何百万人の人を兵士としてリクルートする必要がありました。(中略)

 今日の軍隊は、少数の、高度プロフェッショナル兵士と、ドローンやロボット、サイバー攻撃に精通したテクノロジストが必要になります。

p.87

新たな仕事ができるかについては悲観的。

コンピュータやAIが認知能力においてわれわれと競争しています。ところが、「肉体的能力や認知能力は機械に任せて、われわれはほかのことをする」というような、「第3の能力」はまだわかっていません。存在するのかすら不明です。

p.88

教育については、

若者についても問題があります。彼らが年を取ったときに必要なスキルが読めないため、今教えるべきスキルが何かわからないからです。30年後の労働市場は不透明なため、大学で何を教えるべきか誰もわからないのです。

現在進行しているのは、寿命が伸びることと、テクノロジーによる社会の変化が加速していること。

人生を生き抜く上では、絶えず新しいテクノロジーを学び続け、新しい経済状況・社会状況に対応しなければならない時代に入っています。

p.95

50歳へのメッセージ

40歳、50歳になると、アイデンティティと専門性を築くのに相当のものを投資しているので、そこから人生を再出発するのは難しい。どうやってそれができるかはわかりません。30歳を超えると、ほとんどの人は新しいことを学ぶことがそれほど上手ではなくなります。また、ほとんどの人は、変化を好みません。でも、やらなければなりません。

p.96

狩猟民族のように、環境の変化に自らを合わせるべきなのだとか。

第3章は、リンダ・グラットン教授。ほぼLIFE SHIFTと同じ趣旨。人生100年時代への対応がうまく行っている国として、シンガポールと北欧諸国を挙げているのが印象的でした。p.139

デンマークは、絶対核家族なので、生涯教育はよくわかるのですが、スウェーデンとシンガポールは、日本と同じ直系家族的な文化。通常、老害が顕著に現れるはずなのです。

この2つの国が、新しい現実に柔軟に対応しているのは、小さいからでもあるでしょう。日本が学ぶべきところもあるはずです。

では。

「近い将来、役立たず階級が大量発生する」