エドワード ルトワック Edward N.Luttwak 文春新書 2016/3
アメリカの戦略家による中国論。アメリカの大統領が変わるので、中国についての理解を深める必要がありますね。
まず、中国が3つの錯誤。p.27
- 経済力と国力の関係を見誤ったこと
- 経済成長の予測を見誤ったこと
- 大国が2国間関係を持てると思い込んだこと。
逆説的論理(Paradoxical logic)により、大国は小国に勝てない。大国が小国と戦おうとすると、その大国を警戒する他の大国が小国を支援するため。
中国の戦略まずさを表して曰く。
ロシアは戦略を除いてすべてダメだが、中国は戦略以外はすべてうまい。p.53
日本が太平洋戦争開戦時に見誤ったアメリカ文化を評したのがp.88
「カウボーイが来て、問題となる人物を銃で撃ち殺し、その後はみんながハッピー」という文化
中国とのG2を受け入れない背景は、p.102
アメリカ国民は、ソ連や中国のような国と「G2」、どのような状況の下でも受け入れない。自国を独裁国家と同じにされることを嫌うからだ。
一方、独裁者の弊害も指摘。
「習近平にはフィードバック・システムがない」ということだ。彼は誰にも相談できず、正確な情報も伝わっていない。
ロシアの諜報力が、中国が上回っているとしています。
中国の海軍については、シーパワーと海洋パワーを定義することで解説。シーパワーとは艦船の数や性能など、狭義の海軍力。海洋パワーとは、友好国、同盟国のネットワーク、他国の港湾施設の利用権といった、海軍の作戦遂行のためのインフラを含めたより総合力。中国は後者が弱いとしています。
第5章では、日本に封じ込め政策を推奨しています。シベリア開発協力の意義は、p.144
中国がシベリアの資源を獲得してしまうと、自己完結型の圧倒的な支配勢力になってしまう。シベリアを当てにできない中国は、船を使って天然資源を輸入する必要あるため、海外に依存した状態になる。
ロシアの評価は、p.156
ドイツ人は、ロシア人よりはるかに勤勉で、野望もそれほどなく、テクノロジー面でもはるかに進んでいるのに、戦争では必ず負ける。ドイツは戦争に負け、ロシアは戦争に勝つ。それが歴史の教訓だ。
中国の4段階は、以下の通り。
- 中国1.0 鄧小平時代。「平和的台頭」の時代
- 中国2.0 胡錦濤時代。胡錦濤を弱腰外交とみる勢力が、全面的に強硬な拡張主義に転換。
- 中国3.0 2013年以降の習近平体制。ベトナム、フィリピン、韓国などに対し、宥和政策をに展開し、対中包囲網の分断を図る。G2体制構築失敗。
- 中国4.0 習近平政権と軍が対立を深め、内部に不安定要因を抱える。周辺国との対立深刻に。
米大統領選挙の結果を受け、東アジアの歴史が大きく動きそうですが、歴史に学んで、変な妄想を抱かないようにしたいものです。