それでも、日本人は「戦争」を選んだ

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

加藤 陽子 新潮文庫 2016/6

東大の歴史学の教授が、栄光学園に出向いて行った授業。こんな時代なので、歴史に学びたい時にオススメな名著。

まず、南北戦争(p.37)から。南北戦争の死者は184千人。太平洋戦争での米軍の死者は92千人。アメリカにとって、内戦の影響を感じられる数値。

レーニンの言葉 p.40

政治は大衆のいるところで始まる。数千人がいるところでなく、数百万人がいるところで、つまり本当の政治が始まるところで始まる。

ベトナム戦争の反省。
“Lessons” of the Past: The Use and Misuse of History in American Foreign Policy by Ernest R. May

1. 外交政策の形成者は、歴史が教えたり予告したりしてると自らが信じているものの影響をよく受けるということ。
2. 政策形成者は通常、歴史を誤用するということ。
3. 政策形成者は、そのつもりになれば、歴史を選択して用いることができる。

戦争のもたらす、根源的な作用について、ジャン・ジャック・ルソーの『戦争および戦争状態論』から。

戦争は国家と国家の関係において、主権や社会契約に対する攻撃、つまり、敵対する国家の、憲法に対する攻撃、というかたちをとるのだと。 p. 49

南沙諸島では、中国は2国間交渉を主張し、日本は国際社会のルールに則るべきとしていますが、リットン調査団が派遣されたときは、

日本と中国が二国間で話し合うべきとする日本側と、連盟が解決すべきだという中国側の主張はなかなかまとまりません。p.346

国民党政府の駐米大使であった胡適(Húshì)の日本切腹中国介錯論(1935年)。

アメリカとソビエトをこの問題に巻き込むには、中国が日本との戦争をまずは正面から引き受けて、2、3年負け続けることだ。p.382

汪兆銘(Wāng Zhàomíng)の反論。

そのように3年、4年にわたる激しい戦争を日本とやっている間に、中国はソビエト化してしまう。p.384

捕虜の扱いのデータ p.468

ドイツ軍の捕虜となったアメリカ兵の死亡率は1.2%にすぎません。ところが、日本軍の捕虜となったアメリカ兵の死亡率は37.3%にのぼりました。

兵站軽視が伝わるデータ p.469。

兵士の一日の主食は600グラムです。最前線で5千人の兵士を動かそうとうると、基地から前線までの距離にもよりますが、主食だけを担いで運ぶのを想定すると、なんと、そのためだけに人員が3万人くらいひつようになるのです。しかし、このような計算にしたがって食料補給をした前線など一つもなかった。

過労死の源流を見る思い。

歴史を学ぶ意義は、p.94

私たちには、いつもすべての情報が与えられるわけではありません。けれども、与えられた情報のなかで、必死に、過去の事例を広い範囲で重い足、最も適切な事例を探しだし、歴史を選択して用いることができるようにしたいと切に思うのです。