マネーの未来、あるいは恐慌という錬金術──連鎖崩壊時代の「実践・資産透視学」
松藤 民輔 2008/7 朝日メディアインターナショナル
先日、『わが友、恐慌』をご紹介しましたが、同じ著者の最新作。欧米で金融恐慌が進む中ですので、いろんな読み方ができます。
まず、現在の恐慌の原因と結果を、わかりやすい言葉で説明してくれています。学者ではないので、ポイントだけの解説ですが、一般の人には、それがむしろ理解を助けることになるでしょう。ソブリン・ファンドが、欧米の金融機関に資金を出しているのは、「出資」というよりは、「追い証」など、わかりやすいですね。
1929年の恐慌の説明は、こちら。
3年間で1万もの金融機関が倒産し、1933年2月にはすべての金融機関が業務停止。株式市場は80%以上の暴落。世界貿易は70%の収縮。アメリカのGNPは50%減、失業率は2.5%から25%へと10倍になった。ヨーロッパの失業率は、なんと40%にも達した。p.71
80年前とは、相違点もあるのですが、歴史に学ぶ姿勢が大切かと。
今回は、金融機関によって、アメリカ政府の対応が分かれました。P.93にデリバティブの規模の解説図があったので、数値だけ表にしました。
銀行でなくても、政府が介入しなければならない理由がよくわかります。
バブル後の日本政府の失敗については、P.102で触れていますが、今回の処方箋には、触れていません。こういうのは、大前さんの方がポイントをついてますね。
今回の金融恐慌の結果として、ドルの信認低下があるのですが、その例として、タージマハールの入場料支払いにドルが使えなくなったことを紹介していました。P.107
本書は、やっぱり、金投資を進めています。ポジション・トークを割り引いても、実質ベースでの金価格(チャート)や、NYダウとの逆相関については、注視する必要があるでしょう。 では。
DJIA Historical chart (1900-1989)
【参考】