【本】シャープ崩壊

シャープ崩壊--名門企業を壊したのは誰か

日本経済新聞社 2016/2

日経によるシャープ本。直系家族の社長交代の難しさがわかる新たな例。後継者選びの事例として参考になります。

シャープは権力者の人事抗争の末に悲劇が起きた。堺工場に代表される液晶事業への身の丈にあわない巨額投資の失敗はもちろんだが、経営危機に陥った後に内紛が激化し、効果的な打開策を打ち出せず、傷口が広がったのである。p.19

この辺りは、勝利が続く間は、効率的ですが、一回歯車が狂うと、トップ交代のロジックがなかった帝国海軍を思い出しました。

片山社長時代は、会長の町田、その側近で副社長の浜野稔重が勝手に経営に口をはさむ「三頭政治」がまかり通った。幹部たちは大いに嘆いた。「うちの会社はキングギドラみたいだ」p.19

このあたりも、社員の権限は、職務権限表でカッチリしばりながらも、トップの権限がなぜかあいまいな日本の組織がまた出てきております。

亀山に続いて堺への投資を決定するあたりは、Grouth Thinking のお手本のようなくだり。トップの意向を読んでしまう現場。
そして、危機に陥ってから登場した奥田社長。

奥田さんは代表取締役社長ではなく、意識はいつまでも代表取締役”部長”なんです」p.71

有事と平時のリーダーシップの違い。シャープにチャーチルも、ミニッツのような人材を囲っておく余裕はなかったようです。

そして、高橋社長が登場。先輩に引導を渡す場面は、直系家族ならではの困難さが伝わってきます。役員室を大部屋にして、稲盛さんをお手本に、社員との距離を縮める努力もしたものの、シャープらしさを復活させることはできませんでした。

その後の銀行の対応、出資者をめぐるやり取りは、山一、長銀の話を聞いているような。。。謙虚に歴史に学ぶよりなさそうです。