門田隆将 新潮社 2008/7
酒鬼薔薇事件の被害者遺族の手記を発掘したジャーナリストによる光市母子殺害事件のドキュメント。年齢を重ねると、自分より若い人から学ぶことが多くなります。NYヤンキースの松井選手とならび、木村洋さんからは、さまざまなものを学びました。普段は、寝転がって本を読む私も、いつのまにかきちんと座って読んでしまうような切実さがありました。
この事件の記事は、気にかけて読んでいたつもりでしたが、犯行の残虐性は、初めて知ることが多かったです。初めてお父さんになった人は、自宅の防犯レベルについて、考え直すことになるでしょう。裁判所への遺影持ち込みなど、被害者の権利が制限されていたのも、よくわかりました。
一方、本村さんが、さまざまな人に支えられていたのもわかりました。上司に辞表を出した際に、
労働も納税もしない人間が社会に訴えても、それは負け犬の遠吠えだ。君は、社会人たりなさい p.92
と諭される場面は、新日鉄の人材力を感じます。検察の対応も、非常に力の入ったものになっていました。エピローグでまた、深く考えることにはなるのですが、家族のありがたさは、失ったときにわかるのかと思ったしだいです。
では。