人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか 水野 和夫 日経 2007/3
三菱UFJ証券チーフエコノミストによる、世界経済論。総裁選を控えて、これぐらいの世界観を候補者のお二人に聞いてみたくもなりました。
国際証券時代から、レポートは拝読していました。マクロ分析は当然にしても、ウォーラーステインや柄谷行人の引用も出てくるあたりは、兜町っぽくてよろしいのではないでしょうか(笑)
グローバリゼーションの本質とは、
19、20世紀と200年にわたって実質賃金が上がり続けた「労働者の黄金時代」に終止符を打つ「資本の反革命」(資本による利潤運動)p.2
ととらえている。
その原動力は、95年以降急速に進んだIT革命。
グローバリゼーション下で起こっている3つの構造改革は、以下の通り。
(1)帝国化
帝国の台頭と国民国家の退場
(2)金融化
金融経済の実物経済に対する圧倒的な優位性
(3)2極化
均質性の消滅と拡大する格差
この結果、
21世紀最大の勝者は、国境を超える巨額の資本や「超国家企業」であり、敗者容易に国境を越えることができない先進国のドメスティック経済圏企業や中流階級である。視点を変えれば、近代の仕組みに拘泥する超低金利国が敗者となり、近代と決別できた国が高金利国となって勝者となるのだ。p.3
たしかに、サブプライムの日本への影響をみるとそう感じます。総裁選の焦点である、格差是正も、世界をどう見ているかによって、対策がまったく逆になるのではないでしょうか。
本書だけでは、確固たる世界観も、政策パッケージもみえてこないのですが、豊富なデータを紹介してくれているので、あれこれ考えるには、参考になりました。
では(^^)/~