政策研究大学院大学准教授による戦後日本政治史。福田首相の辞任もあって、総理がどのような辞め方をしているのかに興味を持ちました。
総理の辞め方は、6つに分類されています。
「美しき辞任」(小泉純一郎)
「淡白な辞任」(村山富市)
「結果責任による辞任」(宮沢喜一)
「未練のある辞任」(橋本龍太郎)
「再起を目指した辞任」(田中角栄)
「流れに逆らえない辞任」(小渕恵三)
歴代総理の辞め方をみていると、総理の信念が最近薄れているなと思いました。猛烈な権力闘争の末に総理になったからには、これだけは譲れないという信念がかつてはありました。アメリカのように大統領選挙に1年もかけるのもナニですが、2週間のイス取りゲームであっさり決まると、最高権力への執念も薄れるのかもしれません。
総理の辞め方も様々ですが、「総理の決まり方」の変化もわかる内容になっています。戦前は軍部の支持が必要でしたが、戦後は経済力(資金力)が必要でした。しかし、1989年の海部総理の誕生で流れが変わります。p.185で、自民党幹部の言葉が紹介されています。
カネを配らずに総理になるとは時代も変わった
小泉総理は、2001年により直接選挙に近い総裁選で、逆転勝利を収めます。国民は、より単純でわかりやすい政治を支持したんですね。
この変化の原動力は、情報量の変化ではないでしょうか。玉音放送の内容がほとんど聞き取れなかった時代と比べれば、私たちは、政治に関する膨大な情報を得るようになりました。その結果、政治資金収支報告書の細かなことまで突っ込むようになり、少なからぬ大臣が辞めるようになりました。国民が透明な政治を求めた結果、日本で最も総理に適した人材が、総理になるようになったのでしょうか。少なくともこの2代の総理は、そうでなかったように思います。
そして今年、政権交代のかかった選挙が実施されそうです。国民の投票でより直接に選ばれた首相の辞め方は、どうなるのでしょうか。
では。
【参考】
日経BPの書評 はからずも予言の書?~『総理の辞め方』本田雅俊著 (2008/9/3)