ウィキリークスからフェイスブック革命まで 逆パノプティコン社会の到来 (ディスカヴァー携書)
ウィキリークスからフェイスブック革命まで
金正勲 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2011/4
ウィキリークスとFacebookが世界政治に与えた影響を分析しています。中東のフェイスブック革命については、実にコンパクトに記述されており、基本的な部分を理解したいなら最適です。
「パノプティコン」(一望監視施設)は、ジェレミー・ベンサムが発案した監獄のモデル。円環状の建物の中央に塔を配置し、独房の囚人らを監視します。監視者の姿は独房から見えないため、たとえ監視人がいなくても、囚人は監視されていると感じながら生活することになります。
「逆パノプティコン」とは、民衆が権力を不断に監視することです。ウィキリークスや、Facebookの登場で、機密情報を機密にできなくなり、政府が監視下におかれることになりました。
前半は、Wikileaksの分析。ウィキリークスの特徴は以下のとおり。
- 完全匿名性の保証
- 法的リスクの削減
- 多数のミラーサイトの存在
- 既存の報道機関との緊密な連携
この手のタレコミサイトは他にもありましたが、上記のような戦略を徹底することで知名度を上げています。同サイトの知名度を上げたCollateral Murderはこちら。
ウィキリークスが、ビジネスモデルを変更している説明は興味深いですね。衰退する旧マスメディアと考えがちですが、
情報を分析、検証、説明する能力を有するマスメディアの価値はさらに高まる
という著書の主張には頷けるところがあります。
ウィキリークスとAmazonのやりとりを通じて浮かび上がったのは、ネットというのは、私的空間であること。民間企業のサイトによって仲介されているため、その企業が特定の情報や情報の仲介者を選別し、実質的な表現の検閲にあたる利用停止ができることがおきます。
ハッカー組織「アノニマス」は、反ウィキリークス企業へのサイバー攻撃を主導している集団として登場しています。先日のSONYの事件で存在が取り上げられましたが、勉強しておく必要がありますえ。
また、ウィキリークスは主に政府の情報を対象としていますが、矛先は次に企業にも向けられると警鐘を鳴らしています。民間企業の経営陣も、早晩対応を迫られることでしょう。
読み終えて、2000年に盛り上がりを見せた「反Globalization」が、Social Networkの発展に伴ってより力を持ったと感じました。身近な例でいえば、日本の原発報道。もし、Social Networksが無かったらどうなっていたか考えると興味ふかいです。