統帥綱領
建帛社 1972
日本陸軍将校用の作戦遂行指導書。統帥参考書と、統帥の源流も収録されている。
612ページもあり、軍事研究に興味がなければ、要所を読めばよいと思います。
大軍の統帥とは、方向を示して後方(補給)を準備することである。
ということで、単に軍事だけでなく、日々のリーダーシップに応用の利く言葉が収録されています。
統帥参考の第1項は、リーダーシップ。
1、統帥の中心たり、原動力たるものは、実に将帥にして、古来、軍の勝敗はその軍隊よりも、むしろ将帥に負う所大なり。戦勝は、将帥が勝利を信ずるに始まり、敗戦は将帥が戦敗を自認するによりて生ず。故に戦いに最後の判決を与うるものは実に将帥に在り。(p.5)
2項は、結果主義。
将帥の責任は、あらゆる状況を制して、戦勝を獲得するに在り。
故に将帥に欠くべからざるものは、将帥たる責任感と戦勝に対する信念にして、この責任感と信念とは、その性格と普段の研鑽修養とにより生ず。p.7
このまま精神力を延々と述べるのかと思いきや、下記のように組織運営の要諦にも触れています。
28、中間指揮官は上級指揮官と下級指揮官との中間に立ち、加うるに左右隣接同級指揮官に挟まれつつ、その意思の自由を発揮せざるべからず。
故に、上級指揮官はなるべく中間指揮官の意思に及ぼす繁累と、これによって生じる心労とを少なからしむる如く、つねに配慮するを要す。p.50
この時代に、きちんと組織運営のつぼを押さえていたのは意外でした。
統帥についてよく引用されるのはこちら。
4、将帥は事務の圏外に立ち、超然としてつねに大勢の推移を達観し、心を策按と大局の指導に集中し、適時適切なる決心をなさざるべからず。
将帥の決心を準備し、これを実行に移すための事務は幕僚以下の職務にして、将帥は幕僚を信任して、その局に当たらしむるを要す。
将帥は、たえず軍隊志気の消長を注視し、その作興に努むること肝要なり。p.11
きりがないほど名言が続くが、戦史から学ぶのは、「ピンチはチャンスなり」ということ。まさに、
6.将帥の真価は実に難局に際して発揮せらる。p.14
ということなのでした。