ロバート ライシュ 東洋経済新報社 2008/6
クリントン政権の労働長官で、オバマ候補の政策アドバイザーの経済論。先日紹介した、東洋経済 「2008年上期 経済・経営書BEST 100」で2位になってました。
過去半世紀の経済の変化を民主的資本主義→スーパー資本主義(Super Capitalism)と説明しています。スーパー資本主義では、通信・金融技術の発達により、消費者と投資家が力を持ちます。
寡占による利益を享受していた大企業は、価格決定力を失い、投資家の要求にこたえることを第一とするようになりました。
(1970年)以前の数十年間、書く産業での上位5分の1に入る企業はほとんど常にその地位が保証されており、5年以内に上位グループから滑り落ちる確率は10分の1にすぎなかった。だが、1998年までにその確率は4分の1になった。p.70
人々も、投資家、労働者、消費者、市民とさまざまな顔を持つようになり、矛盾したことを要求するようになりました(下表)。
たとえば、企業が社員を解雇するの、個人投資家が株価を上げろ、あるいは消費者が価格を下げろと要求するのが一因になるわけです。
なので、期待は企業に社会的責任を果たすよう促す、あるいは、政治による制限になります。が、著者は双方にも懐疑的です。前者は、あくまで利益を損なわない範囲で行われ、後者は激しいロビー活動で無力化されるからです。
実際に労働長官を勤めた経験と、豊富なデータで議論を進めており、非常に説得力がありました。過去20年でおきたパワーシフトを的確に捉えていると思います。
企業の社会的責任の限界は、アメリカの上場企業ではそのとおりでしょうけど、たとえば日本の非上場企業は、投資家をそこまで優先していないのではないでしょうか。
企業ロビー活動についていえば、オバマ議員が300億円集めたことは、政治の市場化をより進めたともいえますし、企業のワシントンへの影響を低下させる可能性もあると思います。日本でも、ネットによる個人献金の動きが出ていますが、派閥の力学を根本的に変える可能性があると思います。
議論はつきませんが、よい本でした。
では。
【参考】
・東洋経済 2008/8/30 p.138 中央大学 山田教授による書評