【本】ロシアの論理

ロシアの論理―復活した大国は何を目指すか

武田 善憲 中公新書 2010/08

現役外交官によるロシア分析。ロシアの視察から帰ってきたビジネスマンが、かの国の行動について理解しようと手に取るべき最初の1冊。エリツィンとプーチンのリーダーシップを比較することで、”The Rise and Fall of The Russian Federation”を描き切っています。

ソ連崩壊後の10年と、プーチン政権下の10年を比較すると、同じ国とは思えないほど弱いロシアと強いロシアは違っています。p.2で紹介されている経済データ(1999年vs2009年)でいえば、
GDP: 187 →1300 bil $
可処分所得: 100 →600 $/月 (モスクワは$1000超え)
石油輸出 : 25→200万バレル/日

しかし、これは結果であって、

何よりも重要なのは、この国がプランと、それを実現するためのゲームのルールを持っているということ p.3

なのだというのが全編を通して語られています。
 ルールを徹底させたのが、以下のような政権運営。

  • 政治の安定
  • 20年という長期的視野に立った政治
  • ぶれないリーダーシップ
  • 少数メンバーによる密度の高い会議
  • 機密保持

どれも当たり前のことですが、いまの日本にないものでもあります。ロシアはこれを徹底して、プラグマティックな施策を次々に繰り出してきています。
リーダーがぶれないことで、国家のルールが国民に浸透してきました。

  • 正しく納税せよ
  • 政治的野心を抱かず、ビジネスに専念せよ
  • 国家の発展に寄与せよ

 こうしたリーダーシップは、かつてのような恐怖政治だけではなく、リーダーの資質が高いことにも一因があります。プーチンが始めたテレビ公開対話は、市民生活に関する問題からマクロ経済、外交、安全保障と多岐にわたるにもかかわらず、3時間にわたってカンペなしの受け答えをしたそうです。
家族類型でいえば、ロシアは権威主義な国であり、プーチンのようなリーダーシップが効果を挙げているのが興味深いです。共同体家族と直系家族は、親子の間に権威関係を認めており、このあたりは日本政治にも参考になるのではないでしょうか。
読後には、自分が20年以上も前である冷戦時代のイメージにいまだに引きずられていたのがわかりました。
では。
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