求められる学生のキャリアデザイン力とその形成
飯吉弘子 2010/3
大阪市立大学准教授によるキャリア教育論。産業界が求める能力を出発点として、学生が自分のキャリアをデザインする力を育成する方法について考察している。
産業界の声は、以下のとおり。
- 問題解決力
- 論理的思考力
- 批判的思考力
- (経験)吸収力
- 行動力
こうした声を受けて、同大学で導入されたキャリアデザイン系の授業(4年間)を分析している。個別指導ではなく、レクチャー形式の大人数クラスだが、学生の反応は素直で、前向きなフィードバックが多い。
今後の課題としては、授業単発で終わらせることなく、有機的な活用を提案している。
以下私の感想を述べたい。
もはや、この問題は、大学だけでは解決できないのかなと思いました。なぜなら、この問題も、「直系家族の罠」(Stem Family Trap)の影響をうけているからです。
直系家族の社会は、権威主義。親、先輩、上司、先生の言うことを聞く社会。非常に教育熱心で、日本、韓国、台湾、ドイツ、スイス、イスラエルなど、古くから優れた教育制度を実現している。伝統技術が継承されるため、高級車や高級腕時計を作る国力を持っている。
直系家族の組織は、親分の権威を大切にする。面目を失うようなことは避ける。よって、Critical thinkingということが苦手。メンバーは親分の意向を推察するため、決定されれば迅速に動くが、親分が方針を間違うと修正に長い時間がかかってしまう。
直系家族の罠とは、高齢化によって直系家族社会がの判断が保守化すること。盛田さんがソニーを創業したのは25歳の時だった。トップが若いと、様々なことに挑戦する。失敗するリスクも高いが、世の中全体でみれば、成功した企業が残っていく。工業がまじめで均質な労働者に有利だったこともあり、直系家族社会は大きく力を伸ばした。
ところが、平均寿命が50歳から80歳に伸び、トップが60代になっていくと、経験が豊富なだけに、冒険しなくなる。企業単位でみれば、無難な経営をしているのだが、社会全体でみると、活力が低下した。人口だけでなく企業社会も「少子化」が進んでしまった。21世紀になって情報化社会になったこともあり、多産多死の企業社会を持つ絶対核家族の国(アメリカ、イギリス、オランダ)が元気になった。
長い前フリになってしまったが、直系家族という文化の上に、企業社会が動いており、その企業社会の要請でキャリアの授業が行われている。
3. 大学教育
2. 企業社会
1. 直系家族の文化
21世紀の新しい経営環境に1と2の部分がうまく対応できずに、日本はもがいている。直系家族の罠にはまったままになっている。
1を変えるべきなのだろうか。1は残したままで、情報化社会に適応した企業社会を作れるか?この重たい質問に答えがないまま、3はガンバレというのも酷な話ではないだろうか。改めて日本は、教育の分野でも岐路に立っているのがわかりました。
では。