【本】円の足枷

円の足枷―日本経済「完全復活」への道筋円の足枷―日本経済「完全復活」への道筋

安達誠司 東洋経済 2007/3

週刊東洋経済の2007年決定版「経済・経営書ベスト100」の9位。2007年1月時点で、金融政策と円レートについて分析した本。当時は120円でしたが、その後、07/6に124円をつけた後に、08/3に96円をつけたことで、本書で指摘してきされている問題が、経済にどのような影響を与えて行ったか振り返ることができます($\JPY Chart)。

金融機関で働くエコノミストらしく、豊富なチャートで為替レートを説明してくれており、私のように第一線を離れたものにも、わかりやすい内容になっています。

ドル円相場が、他通貨に比べて、当局の意志に左右されやすいのは、さまざまなところで指摘されてきました。著者の主張は、こちら。

問題の本質は、アメリカ側の対日政策のスタンスにあるのではなく、むしろ、日本側の政策担当者のスタンスにあるというのが、筆者の「仮説」である。その中でもとくに、日本の政策担当者のスタンスの背後にある「強い円」イデオロギーが最大の問題ではないかと考えている。p.201

実際に、図2-2 国内企業物価ベースの1980年基準購買力平価(p.74)などを見ると、円ドルレートが、購買力価+11%のレベル(125円)に抑えられているのがわかります。先日、ご紹介したルービン長官が強いドル政策を採っていた90年代半ばですら、それは変わらなかった。2003年以降のデフレ解消局面での大規模なドル買い介入と量的緩和でも、それが当局の政策転換を示したものではなかったことが、データで示されています。
1937年のアメリカと日本の比較も興味深いですね。デフレの認識が容易でないのが、よくわかります。最近では、そのアメリカ自身が歴史に学ばなければならなくなりつつありますが。

先日の急速な円高で、為替リスクを再認識した企業も多いはずで、そうした企業の財務担当の方には、うってつけな教科書だと思います。

では。