ポストモダン・マーケティング―「顧客志向」は捨ててしまえ!
スティーブン ブラウン, Stephen Brown ダイヤモンド 2005/1
アルスター大学教授のマーケティング論。コトラーを中心とするモダン・マーケティングの顧客第一主義を批判しています。
MBAのマーケティング授業を受けると、STP、3C、4P、5 Forces、顧客満足度などを学ぶのですが、その有効性について、豊富な例を挙げて疑問を呈しています。
マーケティングはモノを売ることです。モノを売るという本源的行為に建前論的きれいごとを持ち込まない度ほしいと筆者は考えます。(P.ii)
その代案として、TEASEが重要としています。TEASEは、Trick, Exclusivity,Amplification, Secrecy, Entertainmentの略称。各項目の例は、以下のとおりです。
Trick
ドナルド・トランプ、セグウェイ
Exclusivity
デビアス、アメックス、クリスピークリームドーナッツ
Amplification(増幅)
ダリ、アンディ・ウォーホール、ダミアン・ハースト
Secrecy(秘密)
KFC、プレスリー、ナイキ
Entertainment
エジソン、オラクル
ケンタッキーフライドチキンのマーケティングは、面白いですね。さまざまな情報を公開してフランチャイズ店を増やしていったのに、スパイスの秘密は教えなかった。そのレシピは、塩、コショウ、グルタミン酸ソーダであっても。
TEASEの集大成としてハリーポッターのマーケティングが紹介されています(Lesson 9)。飢餓感をあおりながら、なぜか欠品はないなど、確かに「顧客第一」ではないマーケティングでした。
モノあまりの時代には、心理学で商品が売れることが多くなります。しかし、TEASEに基づくマーケティング企画は、マジメな会社で通らないのではないでしょうか。東ハトの「暴君ハバネロ」のキャンペーンは、どの食品メーカーでもできるものではないと思います。
こう考えてくると、顧客第一主義というのは、宗教に近い信念に裏付けられているように思えてきました。とっても、ピューリタン/プロテスタントな考えのようにも感じます。
好調だった製品の売れ行きが鈍り始め、マーケティング戦略を見直す際には、よい本だと思います。
では(^^)/^