構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌
竹中 平蔵 2006/12 日経
竹中教授の内閣体験記。竹中さんには、15年ほど前に会議でおめにかかりました。質素な建物で開催された、手作りの会議で、よく来てくれたなと思いました。小柄なのに力強い議論をする人、教授っぽくないない方でしたが、まさか大臣になるとは思いませんでした。
竹中大臣の功績は、政策研究者にその成果を実現するモデルケースを示したことだと思います。政治は権力闘争ですので、素人には近づきにくい世界ではあります。しかし、条件がそろえば、政策を研究してきた人が貢献できることを示してくれました。
小泉内閣が、特殊なのだとは思いますが、これだけの政策転換を実現したというのは、驚くべきことだと思います。
細かなエピソードから、政官界に少なからぬ影響があったのが伺えます。自分でワープロを打ってレジュメを作る大臣。政策作りにこれほどまでにコミットする大臣。テレビ出演して政策を説明する回数が最多など、政界は企業社会とは違いますね。
読み終えれば、竹中さんがやっていることは、現状を分析し、複数のシナリオを複数作って評価した後に、透明性の高い手順で決定し、工程表を作って管理するという、企業活動と近いやり方です。
それが、地方への財源移譲や郵政民営化という大きな課題になると、この手順通りにできないんですね。この当たり前の手順を淡々と繰り返し続けられるかというのが鍵だと思いました。
第2章の不良債権処理の話は、よい例だと思います。「当局は、行動すれども弁明せず」(p.113)という原則の下、竹中さんの対処は、素人にもわかりやすいです。プロフェッショナルの技量が試される場面だと思いますが、それゆえに、シンプルであることが重要なのだと思いました。
竹中先生、5年間お疲れさまでした。