【本】ニヒリズムの宰相 小泉純一郎論 ☆☆☆☆☆

ニヒリズムの宰相小泉純一郎論
ニヒリズムの宰相小泉純一郎論
御厨 貴 PHP新書 2006/6
 オーラル・ヒストリー―現代史のための口述記録』を書いた御厨先生の小泉首相論。
 自民党総裁選真っただ中ですが、小泉政権の5年を振り返る絶好の本です。


 小泉首相の特徴を説得しない、調整しない、妥協しないの「三無主義」と位置づけ、戦後政治とコントラストを鮮やかに描いています。
 その象徴的な減少として、若年層の投票率改善(P.13)を上げています。政治が面白くなった。その原因のひとつに、憲法、天皇、靖国3つのタブーがなくなったことをあげています。
 次に、小泉さんは、選挙を好感度調査に変えたわけですが、内閣と自民党の支持率に相関関係が無くなりました(P.38)
 P.123では、こうした動きを先進国を襲う「大統領化」(Presidentialization)の波と表現しています。カリスマを持った指導者が、人気と権力を支えにして政治を進めるようになりました。
 P.126では、小泉さんを分析することで、逆にこれまでの内閣の個性のなさが浮き彫りになってきます。総裁が2年おきに変わるのであれば、ビジョンも個性も必要ありませんでした。しかし、5年やりとおすことで、逆にビジョンの大切さがわかってきました。 

やはり、”Presidency makes a President”というのはあるわけであって、そのためにもこれからの総理大臣は相応の任期を務めないとダメだと思うのです。

 こうして歴史を振り返ったあとで、再び、小泉政治はなぜ面白いのかを分析していきます。 

小泉さん以前の総理・総裁は、極端にいうと一切行動しませんでした。総理・総裁にとって、権力は講師するのではなく分け与えるものだったわけです。P.142

 政調会の事前審議という自民党の伝統を無視した小泉さんと、「抵抗勢力」と位置づけられた人の時代感覚の差がよくわかります。
 小泉さんといえば、一本釣り人事ですが、「大蔵大臣で3期連続で予算を作ったら、もうその大蔵大臣には逆らえない」P.146というのも、面白いですね。1年目は見送られたものも、3年目には全部実現するので、大蔵大臣を押していこうという勢力ができ、総理になれるんだそうです(笑)。
 小泉政権でこれをやったのは、竹中さんで、ちゃんと強さの源泉があったんですね。
 メディアについては、こんな言葉があります。 

だから小泉さんは、徹底的に新聞を無視する。新聞はどうでもいいのです。彼にとって大事なのはテレビであって、その意味では「小泉劇場」というのは本当にいいえて妙だと思います。P.157

 
 小泉首相との距離感でいうと、ライブドアの堀江さんもこのように見えてきます。 

そこで社会正義の管鉄とうことで検察は一挙にホリエモンを犯罪者に仕上げ立てあげたのです。これこそ、劇場型司法の登場でした。
 (中略)
 今回の事件で検察が読み違えた一番のポイントは、思ったほどのホリエモン批判が起きなかったということです。たしかに少しやり過ぎたりルール違反はあったろうけど、しかし本当にひどいのは証券とか市場とかの精度的不備のほうではないかという感じになったことです。P.173

 そして総括として、P.202では、政治との距離感をこう述べています。 

昔の池田時代とか佐藤時代は、しょせん政治はわれわれのずっと無効にあったわけです。その後、田中角栄が登場したころからいわゆる大衆政治化が始ったとはいえ、それでもまだ距離感がありました。今や政治番組は、芸能番組的な意味で視聴率が取れるようjに変わったのです。
 まさにその意味で政治がとても近くなった。(中略)清二が、身近になると同時にどんどん小さくなってきているわけです。

この本を読むと、10月からの政治が面白くなりますね。

では(^^)/^