【本】 平成バブル先送りの研究☆☆☆☆

平成バブル先送りの研究
平成バブル先送りの研究
村松 岐夫 東洋経済新報社 2005/3
 日経平均が16千円を回復し、久々に明るい年末ですが、私たちは、本当にバブルを総括できたんでしょうか。そんな気にさせてくれる良書です。8人の執筆者によって、丹念に事実が掘り起こされています。


 個人的に、印象深いのは、やはり、第8章の金融危機への対応がなぜ遅れたかという分析。欧米の金融危機は、表面化してからおおむね3?5年で収束するが、日本は10年以上も継続した。その原因は、にわかには信じられないんですが、金融機関と政策当局の間に正確な情報のやり取りがなかったからとしています。
 筆者は、その点について、金融危機のベストプラクティスとされるスウェーデンと日本を比較することによって、明らかにしています。
 ご存知のとおり、政策当局(金融庁・日銀など)は、金融機関に対して、定期的に検査を行っているし、人材面を含めて幅広い交流を行っている。それなのに、「正確な情報」は、両者間で共有されることはなかった。共有されていたにせよ、「たてまえ」として政策を議論する際に採用されなかったと言うべきでしょうか。
 先の戦争から、最近の耐震基準偽造まで、日本社会に定期的に現れる「ホンネ」と「タテマエ」の乖離による悲劇。先の金融危機もそのひとつかと思うと、日本人の国民性を冷静に考えなければと思います。
 人間のモラルを憂うことは、もちろん大切ですが、社会の仕組みとして、こうした「ホンネ」が議論の対象となる仕組みを作ることは、本当に大切ですね。
 アメリカでMBAを学んだ時に、「Group Thinking」という時間がありました。人間が、集団として考えると、いかに間違った結論に至るかということを学びます。チャレンジャーの爆破事故の前に、事故につながる事実がたくさんありました。しかし、NASAは「打ち上げに成功しなければならない」という意思に囚われていて、こうした事実が埋没してしまったのです。
 アメリカは、まだ、こうしたことを「学問」として考えようという風土があります。 日本は、どうでしょうか。
 2006年を迎える前に考えるのもいいかと思います。

 では(^^)/^