【本】中国の領土紛争

中国の領土紛争: 武力行使と妥協の論理 テイラー・フレイヴェル  2019/7/31

Strong Boarders, Secure Nation

MIT政治学部教授の中国外交論。

著者は、あえて分類するならばネオクr叱る・リアリストに属する国際政治学者である。ネオクラシカル・リアリズムとは「国際社会で発生する結果の周期的なパターンではなく、国際システムの相互作用と国内のダイナミクスに焦点を当てて、個々の国家の大戦略を説明しようとする」アプローチである。つまり、この学派には、中国は内政に影響されつつ、時刻の利益を最大化しようとして行動する合理的なアクターである、という理論的前提がある。

 とくに、本書で特徴的なのは、「中国が譲歩を行った背景には、体制の安定を脅かす国内の脅威が存在した」という観察であろう。言い換えるなら、相手国との関係改善によって自らが直面しているより大きな脅威に対抗するための支援が得られるのであれば、中国は当該国との領土紛争で譲歩することがある。つまり、著者は、中国の体外行動を分析する上で、陽動作戦理論(diversionary war theory)やスケープゴード理論のように、対外的な緊張を利用して混乱した国内社会を団結、結集させるために、危機をエスカレートさせるのだという立場をとらない。また、攻撃的リアリズム(offensive realism) や権力以降理論(power transision theory) のように、台頭する国家が優位に立った時に武力を行使しやすくなるのだ、という立場もとらない。

p.368

最近、戦狼外交のイメーイがありますが、半世紀の国境紛争への対応をみると、様々な手段を使い分けているのがわかります。そもそも中国の国境は長大であり、国、時代によって方法を使い分ける必要がありました。清朝最後の100年で国土の25%が奪われた歴史もあります。(p.49) 中国はしばしば譲歩や妥協も選択しており、必ずしも強硬一辺倒でありませんでした。

また、中国指導部は国内の民族分裂の危険性を非常に危惧しているのが、国境紛争からもわかります。

国際政治の知識があれば、もっと深く読めるのでしょうね。たとえば、Claim strentgh。

クレイムは領土に関する主張、ストレングスは強さを表す言葉である(中略)「領土主張のための実力裏付け」という意味であって、国際法上の立場を有利にするという意味ではない。基本的には、支配下にある領土の大きさとパワー投射能力を掛け合わせた強さを指す。

p.370

日本にいると尖閣諸島での衝突で中国の国境対応を理解しますが、海洋と内陸とでは、だいぶ対応が違いますね。歴史と国際政治の研究をもっと知らねばと思いました。

では。