【本】When Markets Collide

When Markets Collide: Investment Strategies for the Age of Global Economic Change
Mohamed El-Erian   Mcgraw-Hill (2008/5)

PIMCOのCEOによる金融市場論。The Financial Times and Goldman Sachs Business Book of the Year Award 2008受賞作。IMF出身者だけあって、マクロ経済の変化を的確に捉え、昨今の金融市場の変化と処方箋を示しています。

現在進行しているパラダイム・シフトの要因は、以下の3つ。

  • 投資の主体が、先進国から新興国に移った
    世界的に大規模な資金過剰が起こった
     
  • 新興国や産油国は、資金をSWFなどによって自前で運用するようになった
     
  • 新金融商品は、高度なリスク分散を可能にした
    しかし、金融市場の不安定要素となった

近年の国際金融市場に起こった「異常」の例として、2005年のフラットニングがあげられています(p.9)。Figure 1.4にイールドカーブの推移がまとめられているのですが、FRBが短期金利を調整したのに、長期金利が変わらないのがわかります。思えば、このあたりから国際金融市場のお金の流れが偏重をきたしてしていたのでした。
Figure 1.1 では、発展途上国の対外収支の推移が示されています。1998年まで赤字だった収支が、近年急速に黒字額を伸ばしているのがわかります。
Figure1.2は、国ごとのデータなのですが、アメリカの赤字と中国、日本、ドイツの黒字が際立っているのがわかります。

今回の危機の根本原因は、古い金融制度が急増する富の移動を支えられなくなったことに求めています。

金融機関のインセンティブ設定の問題については、「すべバブ」と似た指摘をしています。CITIのPrince CEOのコメントを紹介しています。

When the music stops, in terms of liquidity, things will be complicated. But as long as the music is playing, you’ve got to get up and dance. We’re still dancing.(FT Jul. 10, 2007)

映画Wall StreetのGordon Gekkoのスピーチを引用して、金融機関のメンタリティーも問題にしています。

The point is, ladies and gentleman, that greed — for lack of a better word — is good. Greed is right Greed works. Greed clarifies, cuts though , and captures the essence of the evolutionary spirit. 

サブプライム問題の俯瞰図を見てみたい方には、おすすめです。

では。

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