テイラー・スウィフトのコンサートを見て、盛田会長の先見性に圧倒されました。
本人は、そこまで見通せていなかったと思いますが、彼女をここまでのアーティストにした技術に、盛田さんが投資していたからです。
第1が、オペラ歌手を社長にしました。彼女の素晴らしさの一つは、音楽性の高さですが、ソニーでも、大賀社長が就任して、「本物の芸術」しか許されない文化ができました。盛田さんはオーディオを売りたかったのだとは思いますが、東芝、日立、ビクター、古河などがレコード会社から消えたことを思えば、大きかったと思います。
第2に、出井社長を自分の息子の家庭教師にしてました。文系社長ということで、ソニー内ではさんざん叩かれましたが、ネットの破壊力を正確に理解していました。テイラーの活躍はネットなしでは語れません。ソニー・ピクチャーズを建て直したのも大きいですね。カメラを売るだけでなく、素晴らしい映像を撮影するノウハウもソニーにはあります。テイラーの素晴らしさの一つは、映像スタッフの腕に支えられていると思います。
第3に、ストリンガー社長を見出していました。そもそも、取締役会を外国語で開催できない上場企業にとってみれば、社長が外国人になることなど想像できないでしょう。社長就任は盛田会長が亡くなったあとですが、GEの取締役会などを勉強し、多国籍企業の取締役会の素地を作ったのは盛田会長です。
テイラーは20カ国で150回もコンサートをする「多国籍企業」です。マイケル・ジャクソンのワールドツアーをしていましたが、コンサートの映像を今見ると、舞台は素朴ですね。1980年代は、ミュージックビデオは凝ったものが作られ始めましたが、ワールドツアーの舞台演出は、今とは比較にならないと思います。
あの大掛かりなステージをどこの国でも同じ品質で実現できるオペレーションは、素晴らしいですね。ソニーも世界中で質の高いサービスを提供する企業の一つですが、なかなかマネできません。
最後がコミュニケーションですね。テイラーも盛田さんも、話がうまく、本業以外でも「ファン」ができる人でした。Swifties の熱狂ぶりもスゴイですけど、盛田さんが工場に行くと、(女子)社員が一緒に写真を撮ってくれと集まってきてました。いまは、女性と写真撮ると、セクハラかパワハラになるんですかね。そういう経営者減ったなと思いますね。
もしも、テイラーのワールドツアーを1社だけで引き受けられるとしたら、ソニーだけではないでしょうか。