貿易摩擦

「私が学生の時には、日米貿易摩擦が大変な政治問題だったんだよ」

と今の学生に言ったら笑われるかもしれない。下図は、米国の貿易収支の推移。赤字幅の大きい4カ国を抜き出してある。赤字が1千億ドルを超え、その4割が日本だったので、Containing Japan(1989) とか言われていた。私は、貿易摩擦を議論しに、ニューヨークまで飛んでいったのだった。

アメリカの貿易収支 (million USD)


あれから30年(きみまろ調)。

90年に、「これ以上の貿易不均衡は維持不能」と言っていた人は、謝らなければならない(笑)。中国の怒涛の輸出は、2000年以降の世界経済の変化を語って余りある。むしろ、これだけのガワママを受け止めたアメリカが偉いとすら思える。

アメリカの貿易収支(対中国) mil USD

貿易赤字を巡る議論の中身は、80年代に学生だった私が考えたものと余り変わらないだろう。

  • 赤字が悪いわけではない
  • アメリカ企業が中国でモノを作っている
  • Googleを使っても、貿易赤字は減らない
  • GDP比率で見れば、問題ない

などなど。

米国経常収支(対GDP比)

source: tradingeconomics.com

しかし、30年前と以下の2点が違う。

ひとつは、覇権国が移りそうだということ。90年時点で、日本の覇権が移るということは、(少なくとも軍事的には)無かった。今回は、その可能性がある。

もう一つはYouTubeがあること。90年の学生には、ニューヨークがどんなところか知るすべが限られていた。今は、大谷選手が3試合連続ホームランを打つと、その勇姿をすぐに見れる(無料で)。遠い異国のことと忘るることなどデキない。

今の学生に言えるのは、30年前よりも、事実を見分ける力とその分析力が問われるということだ。