2023年の名目GDPで日独逆転が起こったことについて、家族類型から考えたいと思います。
大航海時代は、核家族の時代でした。直系家族は親の面倒を見なければいけないため、船で地球の裏に行けません。植民地を手に入れた欧州の核家族国は、資本を蓄積することができました。
しかし、核家族だけでは、資本主義の時代をリードできませんでした。機械を造るためには直系家族の技術が必要だったのです。絶対核家族のイングランド(資本)と直系家族のスコットランド(技術)がぶつかる辺りで蒸気機関車ができたのは偶然ではなかったと思います。
2つの世界大戦は、直系家族 vs. 核家族の戦いでした。保護主義で資本蓄積を可能にした直系家族は、ものづくりのちからを遺憾なく発揮。もう、核家族に遠慮せずに成長できると信じたわけです。同じ直系家族同士の日独が、同盟を組んだのもわからないではありません。日本は、欧州政治を冷徹に分析すべきでしたが、気が合ったのだと思います。
戦後、直系家族の時代が再び来るかと思われましたが、90年代に再び絶対核家族の時代に戻っていきました。インターネットなどのテクノロジーは、空気を読まずにリスクをとる絶対核家族と波長が合いました。
直系家族は年長者の言うことを聞くので、高齢化の影響が顕著に出ます。日独の停滞は、「直系家族の罠」そのものでした。
しかし、芸風の似た日独なのに、半世紀ぶりに逆転されたのはなぜなのでしょう?ユーロ建てのGDPは下図のとおり。
為替の話で言えば、EUR/JPYが151円に下落したから、逆転されました。145円より円高であればまだ3位ということです。このチャートを見れば、国が豊かになるというのは、通貨が強くなることだったのだとわかると思います。
オランダから見ているとドイツも、日本同様、直系家族の罠にハマっているように見えます。権威主義的なところは変わりません。コロナ時に電車内でマスクから鼻がでているのを乗客から注意されたのはドイツだけでした。デュッセルドルフの駅に降りたら警官がコロナ規制の違反者に目を光らせていました。2時間特急に乗ってアムステルダムに着くと、自由な国だと実感しました。
IMDのランキングを見ても、競争力を維持しているとは言い難いですね。
ドイツの鉄道は正確でもなかったですし、ITが日本より進んでいるとは感じません。
日本との差というと、移民・財政政策でしょうか。両国の人口推移は、下図のとおり。
日本が減少に転じているのに対し、ドイツが増えているのは移民の差でしょう。(図と表の数字が微妙に違うのをご容赦ください)。移民の比率が日本とは全く違うのは、陸続きであることも一因でしょう。
労働力人口(15-64歳)の比率は、日本の方が低いですが、ドイツも移民を除けばあまりかわらないのではないでしょうか。
政府の純債務は、下図のとおりです。東ドイツ統合のコストを引き受けてなお、政府の債務を厳格に管理してきたのはさすがだと思います。
と、いろいろ思いをめぐらせていくと、ドイツは同じ直系家族でありながら、子供には厳しい親だったのではないかと思います。景気が悪いと子供が泣いても、金融政策を緩めっぱなしにはしませんし、補助金を大盤振る舞いしませんでした。移民排斥しがちな直系家族な国民に、移民を受け入れるよう説得したのも厳しい親でしたね。日本が学ぶべきなのは、直系家族的な文化なら、上に立つものが厳しいことを言わなければ、社会は良くならないということではないでしょうか。