貧困襲来
湯浅誠 2007/7
NPO法人自立生活サポートセンター「もやい」の事務局長の本。日本の貧困の広がりとその処方箋について、簡潔に解説しています。
まずは、福祉の質の変化に触れています。福祉といえば、国家が主体となるのがグローバルスタンダードであるにもかかわらず、日本は、企業福祉と家族福祉を中心に運営されてきました。その2つが弱まった結果、国家による福祉の貧弱さが浮き彫りになってきています。
筆者は、「もっとしっかりすれば何とかなるはずだ」という大人たちに「アンタらの時代とは違う」p.18と厳しいコメントをしています。日本女子大の岩田教授の「2つの神話」を引用しています。
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- 仕事は必ずあるはず
- 仕事さえすれば生活は何とかなるはず
本書では、この神話が崩れている実態が、さまざまな具体例で紹介されています。格差うんぬん以前に、貧困の問題に光を当てなければならないのがわかります。
なぜ、貧困が目に見えるかたちで議論されないのか。それは、「4重の否認」があるからです。政府、マスコミ、市民が存在から目をそむけかつ、本人自身も、自己否定に陥っているからなのだそうです。たとえば、政府は、生活保護の捕捉率(対象者に対する受給者の割合)を1966年から調べていないのだそうです。
貧困に陥る原因には、「5重の排除」があるとします。教育課程、企業福祉、家族福祉、公的福祉、自分自身から排除されることによって、「溜め」(バッファー)がない状態におかれてしまう。一歩を踏み出せと背中をオスにしても、安全ネットがあるかないかは大きな違いです。逆に、生活保護提供する側の本も読んでみたくなりました。
では。