バカ殿症候群

 オランダで運転するようになってから初めて日本に帰国した。羽田空港から車で隔離先に向かう時、祖国の道路老朽化に気分が落ち込んだ。アムステルダムで運転している時には気づかなかったが、オランダ政府は戦略的に道路整備をしていた。

 たとえば、次の2つの地図を見比べてほしい。

 両国とも首都空港から南西に40kmほど車を走らせた場合のルートだ。おそらく小学生でも気づくと思うが、日本の道は、「グニャグニャ」だ。

 これは、両国の人口密度によるものかもしれない。北海道では直線になるだろう。ただ、私には国民性にも影響されていると考える。

 オランダ人は、合理的に物事を考えるのが得意だ。もともと海を埋め立てて国土を作った人たちだ。全体を俯瞰し、どのように運河を建設すれば、水がどこからどこへと流れるかを徹底的に分析してきた。一歩間違えば、数千人が水害にあう。妥協は許されない。

 オランダ人は、自動車は、「まっすぐ速く走る」という本質を議論の中心に据えるはずだ。道路はできるだけまっすぐ、太くする。Rはなるべく大きくして、カーブで車体が揺れないようにする。事故のほとんどは、交差点で起きるので、ロータリーにする。歩行者や自転車は、車と接触事故を起こすので、自転車専用レーンを作り、自動車と歩行者を隔離する。など、人間がミスしてもダメージがすくなくなるよう、インフラを作り込む。オランダで運転していてヒヤッとすることは少ない。

  一方、日本は、曲がりくねった農道をそのままの形で一般道にできてしまう(建設現場が優秀)。急カーブが連続すれば、事故りそうだが、無事故で運転できる(運転手も優秀)。オランダでは35分で到着するところに2時間4分かかっても、「Shikataganai」と諦める(アンガー・マネジメントが巧み)。

 21世紀になって20年経過したが、いまだに自動車がすれ違えるかな?と思うほど細い道路がよくある。そんな道なのに、なぜか律儀に境界ブロックが敷設されており、歩道は人が歩けないほど狭い箇所もあり、女子中生が自転車を走らせている。こんな危ない道、アムステルダムでは、なかなかお目にかかれない。

 人口10万人あたりの交通事故死者数をみてみよう。

なんと、日本の道路の方が運転しづらいのに、運転手の不断の(普段の?)努力でオランダを下回ってしまった(笑)。

 現場が優秀だと、無能な人でもリーダーが務まってしまうことを「バカ殿症候群 (Baka Tono Syndrome, 以下BTS)」と命名したい。日本はBTSの総本山。事例に事欠かない。たとえば、先日報道のあったファストトラック

入国手続きの時間を短縮できる「ファストトラック」、5つの国際空港で利用可能に
 現在海外からの日本入国時に、ボトルネックとなっているのが検疫手続き。新型コロナウィルス感染拡大防止と水際対策の一環として、搭乗72時間前までの検査証明書や宣誓書の確認と提出、さらに自宅待機のためのアプリインストールやスマートフォンの動作チェックといった作業が必要になる。

 入国時の検疫手続きの一部をデジタルで事前申請できる制度だが、EUでは去年の7月に実施されていた。なぜ8ヶ月も遅れたのか。一度、帰国してみればわかる。現場の人は、みごとな手さばきで紙を並べ替え、クリップで止めて、赤ペンチェックし、丁寧な言葉で、私を空港中案内してくれた。いったいいくら人件費かかってるんだ…。

 現場が対応できず、「空港難民」が膨れ上がれば、システム作れ!と大目玉が首相から厚労省に落ちたはず。現場がなんとか回してしまうので、うやむやになってしまう。

 高齢化でインフラに回すお金がなくなる前に、こういうところに気づくといいのですが。

では。