今年は社会人になってから30年を振り返ることが多い。1991年は、冷戦終了で浮いた軍事費を他の分野に振り向けようという「平和の配当」(Peace dividend) を議論していたときだった。
30年後の世界は、むしろ、「平和の負債」(Peace debt)に苦しむ世界のように見える。戦争は社会をかき回す。指図されることは面白くはないが、指揮官が激戦地で命を落とすというのは、命令に従うのに十分な理由となる。敗戦となれば、支配階級が没落する。シャッフルにより社会の格差がリセットされる効果は否定できない。
平和が続けば、命令する人が固定される。大卒の子供は大卒。「あのエラそうにしている人ムカつくな」というのが長年に渡り変わらなくなる。階級が固定化し、社会の流動性がなくなるのは、平和の負債ともいうべき影の部分なのではないか。
もちろん、先進国間の戦争が70年以上ないことを責めるわけではない。平和にもこうした負の側面があり、戦争によらずに解消する知恵が試されているのだと思う。