イギリス総選挙の結果が出ました。保守党が過半数を得ました。世界が変わったのを確認した思いです。
「Brexitなんて意味わかんない」という日本人のランキングがあるとしたら、私はその上位者になるでしょう。なぜなら、今年の私は、欧州で働くために、必死で努力したからです。日本のパスポートは、世界最強らしいですが、それは、「行けるか」であって、「働ける」わけではありません。オランダで働くために、私は書類をそろえ、移民局に赴き、私と同じようにビザ申請をする、肌の色の違うみなさんと競いあいながら、やっと許可を得ました。
誰もが知っている大企業の駐在員として、査証を申請するのとは訳が違います。「おぬし何者?」という視線を常に浴び、90日のデッドラインに間に合うか、肝を冷やしながら取り組んでいました。
ビザは取れたものの、これが続く保証はありません。何かの理由で取り消されれば、荷物をまとめて退去しなければなりません。
そんな私が、オランダで働いて最も衝撃を受けたことの一つが、EU内での労働の自由です。EUで生まれれば、EUのどこの国でも働ける。フランスで生まれて、同国の国籍があれば、労働ビザを得なくても、オランダでアルバイトができるのです。これこそが「最強のパスポート」ではないでしょうか。
エストニアで生まれて、ドイツに留学。夏はオランダでアルバイトして、フランスに就職。という自由が、EUパスポート・ホルダーにはあるのです。ま、国土の大きさ的には、ミネソタで生まれた学生が、シカゴ大学を卒業して、ロスで就職の方が振れ幅が大きいかもしれません。しかし、厳然と存在する、言語、文化の壁を、パスポートひとつで簡単に乗り越えられる素晴らしさは、実際に労働ビザを取得する苦労をしてみないとわからないものです。
それをあっさりと捨てる判断をした英国民。Anywhere vs. Somewhere の話を思い起こさずにはいられません。私の人生はanywhere でした。世界のどこでも生きていけるように外国語を学び、異文化を理解する50年でした。しかし、今の世界政治を動かしているのは、somewhere な人です。あるコミュニティに定住し、地域を活性化し、その価値を守っていこうとする。私も、思うような投票ができなくなって久しいですが、選挙を動かしているのは、まさに、somewhere な人です。EUに留まっている国々では、まだanywhere のメリットを実感しているのだと思いますが、イギリスは、anywhere vs. somewhere がちょうど、やじろべえのようになってしまったのだと思います。まるでタイの赤シャツvs黄シャツのように。
私は、イギリスの実質的な分離(アイルランドとスコットランド)を予測しますが、今後どうなることでしょうか。
では。