教科書を取りに、在オランダ日本大使館に行った。アムステルダムからハーグの大使館までは電車などを使って2時間。大きめの紙袋を持っていったが、教科書重くて底が抜けそうだったので抱えて帰った。家で重さを測ると6kgもあった。
40年ぶりに異国の地で教科書を読む。その印刷技術に圧倒された。紙質、フォントの美しさ、レイアウトの巧みさ、色使い。難しい漢字にはルビがふってあり、脚注は、ページの最下部まで使って印刷されている。(はみ出て印刷され、きれいに切断されている)。
教育・出版関係の大人が、印刷技術を極めている間に、子どもたちは、スマホでTiktokするようになった。コロナ禍で日本の義務教育は不敗戦を喫した。オンライン教育に切り替えることができなかった。
私がいま、オランダで働くことができているのは、日本の素晴らしい教育のおかげだ。少なくとも、1999年にミネソタ大学のMBAに入った時、日本の義務教育の問題を感じることはなかった(除く英語)。
あれから20年。コロナはわが祖国のITの遅れを浮き彫りにした。オリンピックの柔道で、日本がメダルが取れなくなったような悲しさ。なんでかなと考えていたら、いつもの家族類型が、思い浮かんだ。
インターネットが一番ハマったのは、絶対核家族。生徒の方が先生よりネットに詳しくても、もともと、社会が、親子間の上下関係がないので、気にならない。生徒間の格差もあって当然だと社会が思っているので、使える人からネットを使っていき、気がつけば、教育でのネットの活用が一番進んでいる。
生徒間格差を気にしないので、取り残される生徒は多い。しかし、先行組が様々な教育プラットフォームを作るので、スピル・オーバーがある。
真逆の共同体家族は、先生が偉く、生徒が平等。目標や過程が決まっている算数ドリルとか、スポーツ選手選抜とかは得意。一日15時限授業とか、スポーツ選手にドーピングとか、人工知能を使って生徒を監視するとかも、全国民に抵抗なくやってしまいそう。
日本のような直系家族的な社会は、先生がネットを使えるようになるまで、義務教育にネットは入ってこない。先生が、Zoomでスライドを投影する練習している間に、小学校1年生は、Siriで音声検索をしている。
ただし、トップが、オンライン教育を最優先とした場合、変化は早い。大阪知事が、オンライン教育開始の期日を宣言したが、そうなったら、力を発揮する。もしも、悠仁親王が、Zoomで御学友と学ばれる姿が放送されたら、一夜にして、実現してしまうかもしれない。
日本(義務)教育のSWOTは、
Strength
・全国均一の教育
・親が教育熱心
・日本語で教育を完結できる
・教師の質の高さ(決まったことを教える)
・教材の豊かさ(寺子屋以来の伝統)
・イベントが多い(たとえば中国は、勉強のみとかありうる)
Weakness
・新しい技術への取り組み
・個別対応(全国に緊急事態宣言を出して欲しいなど)
・外国語学習
Opportunities
・ゲームのプラットフォームを作った国
・アニメ(キャラ)が強い
・公文式、くまじろうなどの海外展開
Threats
・自動翻訳で、海外のオンライン授業が日本へ
よって、私が良いなと思うオンライン授業の取り組みは、
- フォロワー戦略
オンライン授業で、絶対核家族圏に勝てる気がしない。日本独自のプラットフォームを作ったり、個性を育てる教育とかしない。明治時代の和魂洋才よろしく、絶対核家族圏の実例を分析し、最低限のカスタマイズで、オンライン教育を普及させる。 - 小さく生む
オランダのように「公立のインターナショナルスクールを」実験的に運営してはどうだろうか。東京師範学校の中に数クラスを英語で運営し、世界中のオンライン授業を実践。日本の義務教育にあう方法を取捨選択する。天才プログラマーではなく、ソムリエがいればいい。 - 資格制度
国家試験が大好きな国民性に則り、オンライン授業のススメ方をオンラインで教え、オンラインのテストを通じて資格を与える。あくまで上からの改革。
では。