【本】ノモンハンの夏

ノモンハンの夏

半藤 一利 文藝春秋  2001/6

70年以上前の戦争に学ぶことは多いですね。関東軍の暴走だけで終わるような単純な話ではないのがよくわかりました。

戦闘が起きたのは、1939年。第二次世界大戦が9月に始まるその前の半年。この頃の陸軍の様子を表す言葉は、p.136。

外には統帥権の独立を強調し、利用した。しかし自分に都合の悪いときには都合のいい理屈をつけて、これを完全に無視したのである。かれらは「天皇の軍隊」を誇示しながら、天皇に背くことにまったく平気であった。

大軍が動いてしまってから大元帥の認可を得ることへの批判は、p.220。

天皇の意思をないがしろにできるほど、そのころの陸軍の勢威は国家のすみずみにまであまねく行き渡っていた。当時の日本帝国は日本陸軍によって占領されている、と形容しても誤りがない。

しかし、軍部だけが独走できたわけはなく、国民も、反米英の風潮になっていったのでした。ナチスドイツの第五列(重宝・宣伝部隊)の活躍は、p.166あたり。

なぜ解明的な海軍があれほど親独になったのか、という質問に、あっさり回答を示してくれた元海軍大佐C氏の言葉が想いだされてくる。

「それはドイツにいった軍人に、かならずナチス・ドイツが女をあてがってくれたからですよ。しかも美しい女をね。イギリスやアメリカはピュリタンな人種差別のあるくにですから、そうはいかなかった」

少数精鋭であるがゆえに、内部の人間関係が密になってしまう矛盾。結果、精鋭が少数だったことが後日判明。

ちょっとした対人関係のこじれが、国家を揺るがす判断ミスにつながる怖さ。判断ミスの大きな部分が、コミュニケーションの下手さに起因することに驚きます。

現場の下剋上が、周期的に起こる組織。関東軍と参謀本部の対立は、日系企業の東南アジア現法と本社の会話を聞いているよう。

大敗したにもかかわらず、わずか2年後に太平洋戦争で過ちを繰り返してしまう学習能力のなさ。

勉強になりました。