冨山 和彦 文藝春秋 2017/3
人工知能によって経営がどのように変わるのかを分析した本。AIバブルですが、経営者にとって何が起こるのか考える良書でした。
第1章ではデジタル革命の時間軸。
第1段階 ダウンサイジングと水平分業。IBMからWinTelへ
第2段階 インターネットとモバイル。ソニーからアップルへ
第3段階 AIとIoT。リアルでシリアスな世界へ
デジタル「技術」の観点からも主戦場はカジュアルテックからシリアステックにシフトしていくことになるのだ。p.5
たとえばトヨタは、
トヨタから見れば、真の競争相手はフォルクスワーゲンではなく、ライドシェアの「Uber」や「Lyft」かもしれない。(中略)
スマホやタブレットなどのデジタル機器では、垂直統合で自らiPhoneやiPadを作るアップルを除けば、メーカーはみんなグーグルの軍門に下ったわけで、それと同じことが自動車業界でも起きる可能性がある。
そうなると、真面目に自動車を組み立てても儲からなくなるかもしれず、しっかり「稼ぐ力」のある企業として生き残っていくには、自動車を着く閭里も移動する「コト」に関わるサービス型企業に返信すべき時代が来るかもしれない。あの帝国IBMがコンピューターメーカーからITサービス企業に大変身したように。p.29
企業が恐れるべきは、
慌てふためいてかかる領域で中途半端にキャッチアップ的、me-too的な自社開発に無駄な時間とエネルギーを使い、結果的に標準となって格安で手に入るベストプラクティスに乗り損ねることである。p.34
第2章では、この第3段階が、日本企業な理由を解説。それは、シリアスな分野では、ハードとソフトの融合が焦点になるから。逆に、オープンでよいところは割り切りが必要。たとえばシステム。
日本企業は基幹業務システムの領域でも、ERPシステムを独自仕様でつくり込んでしまったがために、完全にガラパゴス化して、今や陳腐化したレガシーシステムの負の遺産に苦しんでいる。
本来ならソフトウェアアルゴリズムは、どこかの企業がデファクトスタンダードを作ったら、それを使えばいいのであって、多少使い勝手が悪くても、自社のシステムをそちらに合わせておけば、更新もメンテナンスも自社で負担することなく容易に行えるはずだった。ソフト的解決は、ベストプラクティスが組み込まれた業界標準や、世界のどこかで天才プログラマーが想像したブレイクスルーの果実を、臨機応変、自由に取り込むオープン・イノベーションのほうが相性の良い分野なのである。p.98
第3章は、戦略。ですが、組織論、人事制度論です。ホンダのワイガヤや、リクルートをベンチマークとすべき。プロ経営者についてはp.160
それなりに歴史のある日本の組織を相手にしたとき、What で短期勝負に出たっがる外資系モデルの「プロ経営者」はほとんど機能しないのである。When、How、Whoのアートが使いこなせないと、何も変えられず、何も起きないのである。
ソフトバンクのARM買収については、引き抜きが有効だったと批判的です。そこから、資本主義の有効性にも議論を発展させています。p.176
では。
【参考】
- Toyota Research Institute
- Getaround
- Continental Tire
- ホンダ、倒れないバイク、ライディングアシスト
- HondaイノベーションラボTokyo
- Cyberdyne、HAL