堀江 貴文 双葉社 2015/5
堀江さんのしごと論。基本認識は、以下のとおり。
ほんのひと世代前まで、レールの上を歩き「引き受ける」仕事をする人が大半だった。それで社会はうまく回っていた。自分の仕事しかしないような人は、身勝手と悪口を叩かれたり、変人扱いされていたものだ。
けれど、インターネット革命以降、すべては変わった。(中略)仕事は「作るもの」へと、主流が移りつつある。p.2
本書でインタビューした8名の共通項は、以下のとおり。
- 目標からの逆算はせず、今だけに集中する
- 常識にとらわれず、まっさらな目で見る
- 遊びと仕事の境目をなくす
- 皮膚感覚で違和感を感じる仕事は捨てる
- 失敗を恐れず、ひとつの場所に固執しない p.6
集中しているといえば、武田双雲氏。
書道では、よく墨汁もこぼします。書道教室の生徒さんに笑われるぐらい。でも書を書いている時の集中力は、すごいんです。周りのことが全く気にならない。時間も分からなくなります。p.21
多くの人は「未来」に希望を抱きすぎです。大事なのは「いま」です。(中略)「いま」を満たしていくことに手中している方が、数字の達成は、うまくいくと思います。p.26
まっさらな目といえば、佐渡島庸平氏。
僕はマンガが、美術品と同じビジネスを作り出せるという確信があります。若者の娯楽コンテンツだった漫画は、現代アートと並ぶ、世界の富裕層が投資する一大ビジネスになると信じています。.58
多くの人は考えなくても良いことに多くの時間を費やしてしまっていて、思考を深められていません。僕は幸運にも、考えるべきことに時間を費やし、しこを深めている天才的な作家たちの姿を間近で見てきました。p.64
増田セバスチャン氏もまっさらな目。
“Kawaii”は、史上初めて、欧米からの引用ではない、日本の風土が産んだファッションカルチャーです。(中略)グローバルのルールに則って、”Kawaii”を一大ビジネスに成長させるチャンスが到来していると考えるべきだと思っています。p.99
世界で戦ってるなと思わせるのは、こちらの発言。
作品だけ持って行ってもダメ。言葉もセットで持って行かないと、海外では評価されません。プレイヤーであると同時に、言葉を尽くす評論家の視点も必要なのかもしれない。p.102
田村淳氏は、コンプライアンスの圧がかかる民放での笑いづくりを語っています。『6人の村人!全員集合』は、私も見ましたが秀逸でした。
意外なディシプリンを感じたのは、Hikakin氏。
一番、努力しているのは、「決まった時間に出し続ける」ことです。
「HiikakinTV」は毎日19時にアップします。
クリエイティブかつ、プロフェッショナルであること。
現代の飲食店経営が、エンタメであることを教えてくれるのは、小田吉男氏。堀江氏の論評。
誰もがやったことのないアイディアが泉のように湧いてきて、周りの人間の潜在能力を引き出してうまくアサインして実現していくというマッシュアップ技術に長けているのが小田さんの特徴である。p.196
というわけで、本書は好き嫌いがハッキリ分かれると思います。ただ、アジアから見ていると、こういう人しかアジアに出てこれない、というか、受け身の仕事をしている人は、アジアが思うとおりに動かないので戸惑うばかりかとは思います。
また、日本市場の懐の深さを知る本でもあります。シンガポールは市場が小さすぎて、芸能人を自国のみで育てられません。こういう才能を持った人を抱えていられる社会という面は、もっと評価されて良いと思います。
【参考】
対談 : http://toyokeizai.net/articles/-/70157