【本】クオリティ国家という戦略


クオリティ国家という戦略 これが日本の生きる道

大前研一 小学館 2013/1

21世紀の国家像として、シンガポールを分析していたので、読みました。道州制の考え方などは、従来の主張と変わりませんので、気になった点をメモ。

日本が停滞している本質的な原因は、「国家のパラダイムシフト」に対応できないこと。

日本は20世紀後半の工業国家モデルがあまりに大成功してしまった結果、かつてのパラダイムから抜け出すことができずにもがいている。p.13

パラダイム・シフトに対応している例として、「クオリティー国家」を定義。

経済規模は小さく、人口が300万~1000万人、一人あたりのGDPが400万円以上で、世界の繁栄を取り込むのが非常にうまい p.16

スイス、フィンランド、スウェーデン、シンガポールなどが典型。対義語が、ボリューム国家。

第2章は、スイス視察のレポート。

九州と同じぐらいの面積しかない人口787万人の国に、食品・飲料のネスレ、金融のクレディ・スイスやUBS、時計のスウォッチ・グループ、時計・宝飾品のリシュモングループ、医薬品のロシュやノバルティス、重電・重工業のABB、人材紹介のアデコグループ、再保険のスイス・リー、香水のジボーダンなど世界屈指のグローバル企業がひしめいている。 p.50

ネスレの海外展開は凄まじいです。

ネスレの海外比率は96.9%で、世界最大のこの食品会社のしさんは95.8%が海外にあり、売上の97.9%が海外で計上され、従業員の97.0%がスイス以外の海外の国にいる。 p.129

p.51の時計メーカーの売り上げランキングでは、スイスの3メーカーが上位を独占しています。タグ・ホイヤーのジャック・ホイヤー名誉会長の言葉はこちら。

ブランドを維持するためには、1人のプロデューサーがいればよい。ところが、それをセイコーは組織でやろうとする。セイコーに時計を作る職人は大勢いるが、ブランド・マネージメントの職人はいない

教育を通じて民度を上げる努力は凄まじいです。社会保障について質問した時のスイス人の答えはp.76。

スイス人であれば、自分自身で医療保険や年金をかけないとうことはあり得ない。それは個人の責任であり、国家の責任ではないからだ。

第3章は、シンガポール。5年の国家戦略、貸席経済、移民の活用などは既知ですが。印象深いのはリー・クアン・ユー氏が長髪とチューインガムを禁止した理由を語る下り。p.98

我が国は世界中からお客さんに来てもらうホテルであり、国民はそのホテルの従業員なのだ。世界から来てもらうお客さんをお迎えするホテルの従業員に、長髪やチューインガムが許されるわけがないだろう

安倍内閣は、ようやく経済に戻ってきたが、リー元首相のコミットは強烈。

私の役目はシンガポール国民を食わせていくことである。だから、首相よりもファンドの投資マネジャーのほうが重要なのだ。私は国民を食わせていく。だから、国民はいつまでも私のほうを見てくれる p.103


日本への提言は、従来の主張に沿ったものです。

では。